第224話 切り出された島田の秘密
『単刀直入に申し上げましょう。この人物にあなたの臓器……肝臓を提供していただきたい。この人物は当教団には不可欠な人物です……しかし、現在は重度の肝臓癌に冒されている。彼に残された時間は少ない……ですので是非協力をしていただきたいのです。ご安心ください肝臓は臓器の中でも非常に再生能力の高い臓器です。その一部をこの人物に提供する……当然このお礼はこちらの金額で……』
誠は急に話題を切り出すのがいかにも地球人らしいと感心しながらもう一人の男が取り出した紙切れを見て青ざめていく顔の島田を見ていた。
『500億……さすがにため込んでますねえ……でもねえ、うちは『同盟厚生局違法法術研究事件』で臓器売買組織の捜査とかも経験してるんですよ……その時の肝臓の値段なんて500万行くか行かないかだった……どうしてこんな金額を出せるんです?これと同じ程度の危ない橋を渡れば地球なら1万ドルも出せば肝臓を譲ってくれる人いるんじゃないですか?』
島田は今にもその小切手を持って走りだしたい衝動に駆られている。ここにいる誰もが島田の目を見た瞬間にそう確信した。しかし、そんなことをすれば出入り口の灰皿の脇で脇のホルスターに手をやっているかなめに射殺されることを知っている島田はその紙切れを握りしめたまま二人に目をやった。
『ミスター島田。あなたは特異体質の持主……遼州人の持つ法術と呼ばれる能力により不老不死となっている。不死人の臓器を移植すれば彼もまた不老不死になる……地球には不死人などと言う奇妙な存在は居ません。当然彼等の臓器を移植したとしても、おそらくは今回の癌が転移して別の所で発症すれば彼の命はない。その点不死人になればその心配は無い……悪い話では無いと思うのですが』
断定口調でそう切り出した背の低い男の言葉に島田はしてやったりの笑みを浮かべていた。すべては筋書き通り進んでいる。島田が不死人と知ってバノンは島田に接触を試み、こうして大金をちらつかせ、そのデマに踊らされた挙句、そのすべてを知る執刀医によって死の床に就く。それをなんとか阻止することも自分には出来る。島田の余裕のある態度にはそんな考えが浮かんでいるのだろうと誠は思った。
『へえ、知ってんだ……どこでそんな話を聞いたか知りませんが……確かに俺は不死人だ。でも、まあそれで金を稼いだことは今までないが……これがその初めてになるというのも興味深いねえ……それにこれは人助けなんだろ?警察官としては死に瀕した人間を助けるのは当然のことですからねえ……』
そう言って笑う島田を見ながら誠は島田の役者ぶりに感心していた。




