第223話 当たり屋と謎の教団
見ている誠の視界の先で二人の男は東和風にそれぞれ名刺入れを取り出して島田に手渡していた。島田も一応は整備班長としてメーカーの営業などとも交渉することがあるのでこちらも慣れた調子で名刺の交換を行う。
「アメリカの新興宗教が名刺の交換……ずいぶんと東和に入れ込んでいる割には信者はほとんどいない……費用対効果が悪すぎますね。考えられません」
いかにも合理主義者であるリンはそう二人の事を切って捨てた。その言葉に苦笑いを浮かべると誠はこれから島田に二人がどんな話を切り出すのか注目するためにイヤホンに神経を集中した。
『今回の件はどう考えても当教団の不手際であることは間違いありません。誠に申し訳ございません』
いきなり深々と頭を下げる二人の外人の態度に外人ポイ見かけの運航部の『ラスト・バタリオン』の女子隊員の押柄な態度に慣れている誠は困惑したように頭を掻いた。
『いやあ、俺もあの道を通るのは初めてだったんで……でもまあ、そっちが責任を認めるって言うんならいいですよ……でも普通だったらあの事故で俺は死んでる……そこんところを考えた提案をお願いしたいもんですねえ』
慣れた当たり屋の口調で島田はそう言い返した。その態度に二人は笑いあうとそのまま手にしたかばんから何やら物を取り出した。
『これは気持ちと言うことで……これで不十分かどうかはご判断をお任せします』
背の高い方の金髪の男がそう言って何か紙切れを島田に手渡した。
「東和風に小切手とは……どこまでも東和と言うことを知り抜いているつもりのようだね、『神聖聖書教会』の教祖様は。でも、布教は上手くいかない、そして法術に関しての知識も不十分。そうなると哀れに思えて来るね」
学生アルバイトが運んで来たコーヒーを受け取りながらかえでは呆れたようにそうつぶやいた。
「そして次からが彼等の本題かと……どのように切り出すのでしょうか?」
リンは興味深げに島田達を一瞥してそう言った。誠が見てみるとアメリアとカウラもちらちらと島田達の様子を伺っているように見えた。
『ふうん、一億円……ずいぶんとまあ、俺の命ってそんなに安いんですかね?アンタ等地球じゃ相当ため込んでいるって話じゃないですか?誠意を見せると言った割にはこれじゃあ……』
しまだはかなめとかえでに言われていたのでどんな金額を向こうが出してきてもごねることを続けていた。二人の『神聖聖書教会』の交渉担当は苦笑いを浮かべた後、うなずきあい、再び手にしたバックに手を伸ばし大きめの封筒を取り出した。




