第222話 ありきたりのホテル、ありえない提案の予定
地方都市のありきたりのホテルのありきたりのフロントだった。
近くに成畑空港があるということでゲルパルトや外惑星などのヨーロッパ系の顔立ちの観光客も目立つ中、しまだと連れの二人の男の姿は別に珍しいものではなかった。
「さて、どういう風に連中は島田准尉の肝臓が欲しいと切り出すかね……そのあたりが僕の興味を引くところだ」
かえでは笑みを浮かべると誠の左腕を握った。
思えばあのデート事件以来かえでの誠への当たりはかなりソフトになってきていた。
『成長し続けることが人間なんだよ』
かえでは常にそう口にしている。つまり、『許婚』として誠が過度のかえでの変態行為をあまりよく思ってないことは彼女も知っていてそれに合わせて手を握る程度が誠に対しての好意の表れの表現としては適していると彼女なりに考えているように思えた。
誠は正直そんなかえでの態度にいとおしさを感じながらも目は島田と二人の白人男性から離れることは無かった。
すでに喫茶コーナーにはアメリアとカウラが待機して島田達が何処に座るかをちらちらと観察しているのが見える。
裏口からの出入り口にはかなめの姿があり、近くの喫煙所で早速タバコを吸っていた。
「なるほど、島田准尉の気が変わった際は強硬手段に出るべく奥に陣取るつもりですね」
喫茶コーナーの一番奥に向かう二人の男についていく島田の姿を見て誠とかえでの背後を歩いていたリンがそうささやいてきた。
「ああ、たぶん連中は不死人には通常の麻酔薬やしびれ薬の類は聞かないという知識は与えられていないんだろう。島田准尉がごねるようならば体の自由を奪ってそのまま拉致できると考えている。しかし、心配しなくていいよ。島田准尉は君達の提案をすべて受け入れる予定だから……なんと言っても僕がそう仕組んだんだからね」
かえではそう言って笑うと入り口の手前、離れていながら島田達の座る一番奥のテーブルが観察しやすい位置に席を取った。
「いらっしゃいませ、ご注文は?」
早速やって来た若い男の学生アルバイトにかえでは麗しい笑みを浮かべるとその若者は顔を赤らめると同時にその隣に座る誠にいかにも羨ましそうな目を向けてくる。
誠はそれに耐えながらメニュー表を手にしようとした。
「ブレンドで良い。それとミルクは多めで」
誠以外の男を見た時特有の不機嫌さでかえではそう言うと学生アルバイトを追い散らした。
「さて、あの二人は島田君にどんな提案をしてくるのかな……今は島田君は一事故被害者。それが教祖を彼等が救える唯一の存在であるということになると……話の持って行き方はかなり難しいものだと思うのだが……お手並み拝見と行こうか」
かえでの興味深そうな笑みに誠の視線は自然と奥の島田と二人の男の方に向いていた。




