第219話 知育教材並みの暗号と悪意の執刀医の行方
通信を切ってしばらく一息ついた島田は携帯端末をポケットにしまうと慌てたような調子で胸ポケットからタバコを取り出して火をつけた。
「こんなにすんなりいくんでいいんですか?俺、これまでも企業の相談窓口にうんざりするほど文句の電話をかけましたけどこんなにうまく話がまとまったことなんて無いですよ?連中何か考えてるんじゃないですか?」
タバコをくわえる唇を震わせながら島田はそうつぶやいた。
「そりゃあそうだ。連中はオメエさんに連絡するタイミングを計ってたくらいだからな。オメエのサイトに連中の地球圏の本部や東都支部からのアクセスがここんところやたらあるんだ。アタシ等もオメエのサイトに馬鹿みたいに乗っけてる個人メールアドレスをチェックして連中がオメエに連絡して来るのを首を長くして待ってたくらいだからな」
かなめは再びタバコに火をつけると銃をホルスターに仕舞って安心したような表情でそう言った。
「アレですか?でも俺はあの画面を見て何もわからねえような奴のメールなんか見ませんよ」
そう言う島田にカウラはつい吹き出していた。
「画面に作る気もない昭和の日産自動車の車の写真ばかり乗っける。ちょっとネットで調べればそのくらいのことは誰にでも分かる。それは小学生レベルのセキュリティーだな……『23』と題名に記されていないメールは見ない。そんなのセキュリティーとと言うより幼児向けの知育教材だ」
カウラは諦めに似たため息をついてそう言った。
「え?分かったんですか……って車にゃうるさいカウラさんが分かるのはいいとして皆さんも……ああ、じゃあサイトのメアドをもう少しわかりにくい場所に移すかな」
そう言う発想しかできないからこんな事件に巻き込まれるんだと思いながら誠はまったく反省する気のない島田を見つめていた。
「やはり左倉か……これでバノンの手術が行われるのは左倉国立病院であることが確定したね。それでは後は執刀医の方の足取りだけど……今のところ後ろ暗いところのない執刀医、リチャード・クレメンスの動向を探ろうか……あの男の事だ。軍では法術研究者として活動していた過去がある以上、東和に来て法術研究者とあっている可能性が高い。リン、すぐに彼の足取りを確認してくれ。東和で地球でも知ることが出来るほどに高名な法術研究論文を発表している研究者の事務所の来客者リストを当たれば一発であの男の動向は把握できるはずだ。そして、月曜日にその予定がキャンセルされれば……すべての線は完全につながる」
かえでの言葉にリンは静かにうなずいた。誠はただ粋がって平然とした表情でタバコをくゆらせているもののひざはしっかりと震えている島田に吹き出しそうになるのを必死にこらえていた。




