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第218話 詰めに入っった事前交渉

『それでは話し合いの機会をもうけましょう。しかし、残念ながら当教団の支部は東都にしかございませんので……』


 金色の前髪を軽く跳ね上げながら女はそう切り出した。


「自分の教団の支部が東都にしかねえ?冗談言うなよ。じゃあ、この豊川の街を走り回ってるオメエ等の信者の乗ってる白にあの趣味の悪い十字架のエンブレムの描かれた車の数をどう説明するんだ?まったく」


 かなめはこれも小声で女の言葉に対して皮肉たっぷりにそう言うとタバコを島田が灰皿に使っていたマックスコーヒーの空き缶に押し込んだ。


『東都から出ている特急が止まる駅となると国鉄左倉になりますが……豊川は隣の市ですよね?ならばそちらの南口駅前で当方の担当者がお待ちしておりますのでそちらでお会いするというのはいかがでしょうか?』


 女の言葉に島田は苦笑いを浮かべる。


「そのままアンタのなんたら教団の秘密施設に連れ込まれて洗脳されて地球に拉致されるなんて御免ですよ」


 島田のにらみつけるような視線にも女は一切顔色を変えずに淡々と話を続けた。


『島田さんは当教団にあまりいい印象を持たれていないようですね。まあ、交通事故の被害者と言う立場ならば当然のことでしょう。ご安心ください。場所も、左倉第一ホテルのラウンジと言うことであれば……人目もあります。島田様は身一つでお越しいただければ今回の事故に関する示談交渉を行うことが出来ます』


 女は笑顔でそう言って島田の反応を待った。島田はと言えば、場所まで指定されるとは思っていなかったので思わず画面から視線を外してこういう時に一番機転の利きそうなかえでの顔を見た。かえではその様子を見て満足げにうなずきその話に乗るように島田を促した。


「へえ、アンタもそんくらいの配慮はしてくれるんだ。いいでしょ。俺も事故の事を隊に知られると始末書もんだから一人で行くのが逆に好都合……だが、司法当局に身を置く俺が事を内密に運ぼうとして協力してあげているんだからね。それにこの東和には地球系の新興宗教団体には根強い不信感がある……まあ、俺もそんなうちの一人なんだが……アンタ等もそれに見合った『誠意』って奴を示してもらわないと困るなあ……」


 一度方向性を示せば持ち前のアドリブで何とかしてしまうのが島田の島田たるゆえんである。見事に金銭の話に話題を持って行く島田を見て女は見事に自分の思惑に島田が乗ってきていると思ったような笑みを浮かべた。


『それはもう安心してください。当方は合衆国に150万人、その他地球の勢力圏にある移民惑星などにも数千の信者を抱える団体です。あなたを安心させられる保証が出来ることはここにお約束いたします』


 女のそのはっきりとした口調に満足したような笑みを浮かべると島田は大きくうなずいて見せた。


「話が分かるねえ……じゃあ、日時は明日の12時に国鉄左倉駅南口と言うことでよろしいですかね?その時間なら外食が伸びたということで隊を抜け出す口実が作れる」


 島田の提案に女は笑顔を浮かべた。


『早速のご対応ありがとうございます。分かりました、当方の折衝担当者の予定も空いておりますのでその時間にお伺いします』


 女の言葉にその場にいる女性陣はしてやったりの笑みを浮かべているが誠一人、この状況が望まれたものか少し首をひねっていた。

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