第216話 カスハラ電話と仕掛ける罠
『はい、『神聖聖書教会』東和本部になります……入信をご希望の方ですか?』
奇麗な日本語を話す白人女性のオペレータを見て島田は驚いたような表情を浮かべた後、一度かなめを見上げた。かなめはタバコをくゆらせながら厭味ったらしい笑みで島田を黙って見つめているだけだった。
「入信だ?ちげえよ!アンタんところ車に引き殺されるところだったもんだ!その文句を言いに電話を入れたんだ!責任者を出しな……アンタじゃ話になんねえ」
かなめとかえでの監視するような視線を受けながらも持ち前のカスハラ気質丸出しに島田は携帯端末の中に映るオペレータを恫喝した。
『当教会の車に引き殺される……それは交通事故と言うことでしょうか?それならば警察の……』
オペレータは当惑しながらそう返すがその戸惑った様子が島田のカスマーズハラスメント気質に火をつけた。
「警察?俺ねえ、司法局実働部隊と言う警察のお手伝いをしている遼州同盟機構の人間なんだわ。アンタどうせ地球の人でしょ?だったら分からねえかもしれねえけど『特殊な部隊』と聞けば遼州圏の人間なら誰でもピンとくる組織に所属している人間だ。その俺がアンタの教団の車に轢かれかけたと言ってんだよ?その意味くらい分かるだろ?責任者を出せ……今すぐだ」
いかにもこういう電話をかけるのは慣れているという口調で島田はそう携帯端末に怒鳴りつけた。
困惑したオペレータはそのまま後ろを向いて何やら同僚たちと話し合いを始めた。
「あそこまでうちの関与を言い切る必要があったのか?それにこれが島田個人の意思によるものでないとバレればこの計画は全て水の泡だぞ」
ペラペラと余計なことまで話しかねない島田の言葉を聞いてカウラは思わず眉をひそめた。
「なあに、相手も十分島田准尉の身元については普通の手段で手に入れられる情報は知っていると考えるべきだろうね。そう考えれば今、島田准尉が話した内容は彼等にとってはちょうどいいカモが自分から罠にかかってくれたという認識しかないはずだ……それに彼等にとってはかけがえのない教祖の死は認めることができない危機的状況と言える……リスクを冒しても島田准尉の身柄を手に入れたい彼等には我々の存在など目に入らないと思うよ」
そう言ってかえではさわやかな笑みでカウラの不安を一蹴した。隣で笑うかなめもまた銃をてにタバコを口にして状況を楽しんでいるかのように笑っている。
「さあて、次はどんな人が出て来るかしらね。バノンの様態は一刻を争う状態。恐らくそれを知っているクラスの東和支部の幹部クラスが出てくれるとこちらとしても話が早いんだけどね」
アメリアもまたやる気になって来た島田の様子を満足げに見守っていた。
ただ一人、誠だけが状況がどう転ぶのか、島田が持ち前の馬鹿さ加減ですべてを台無しにしてしまわないか、それを心配しながら携帯端末を見つめる島田を見守っていた。




