第213話 肝となる島田の肝臓の行方
銃をちらつかせる姉を見てため息をついたかえでは静かにかえでとしては珍しいことに島田に好意的な表情を浮かべてその手を取った。
「実は僕達から君にお願いがあって来たんだよ。そう、君にしかできないお願いだ。それに君はこの事件の中心人物でもある……司法執行機関の隊員として君には僕達のお願いを聞く権利と義務がある……まあ、僕がその話の本質に触れた瞬間君は確実にその話に乗ることは請け合いだけどね」
珍しく誠以外の男に笑いかけるかえでの態度に島田はかなめの銃以上の恐怖感を感じているような表情で誠に視線を投げて助けを求めてきた。
「たぶん島田先輩も無関係じゃないから絶対に乗る……と言うか島田先輩は連中には酷い目に遭いましたから喜んで協力してくれると思いますよ……まあ、かえでさんがどういう風に島田先輩にその協力内容を言うのかまでは分かりませんが」
誠はそう言って力なく笑った。
島田をバノンの所まで連れていく。それだけは誠でもかなめとかえでが望んでいる事なのだろうと推測がつく。ただ、バノンが欲しがっているのは島田の肝臓である。かつて自分が不死人であることを確かめるために信者を使ってがけ下に突き落とそうとした人物を売られた喧嘩は必ず買う島田が許すはずがない。当然、それがバノンの差し金だと知れば島田の方から放っておいてもバノンの所に殴り込みをかけるのは分かり切っている。
「実は……君の肝臓を欲しがっている人が居るんだ。あげてくれないかな?お金は出すそうだ」
あまりに直球すぎるかえでの言葉に誠は唖然とした。そして、誠が目を向けると予想通りこちらもかえでの言葉の意味が分からないという表情を浮かべている島田が居た。
「肝臓?そんなもんなんに使うんです?それに俺だってひよこちゃんから聞いてますよ。不死人は臓器移植どころか輸血だってしちゃいけない存在だって。もしそんなことをしたらその相手が不死人だったら別ですけど、それ以外なら確実にその患者は死ぬらしいじゃないですか……どうするんです?俺の肝臓?食うんですか?温泉卵みたいに」
島田の脳にはまだ温泉卵へのこだわりが残っていることを知り誠は吹き出しそうになるのを必死になって堪えた。
「島田君。島田君を崖から突き落とした『神聖聖書教会』の教祖様……その人、今死にそうなのよね……肝臓癌で。地球のネットはたぶん島田君は関心が無いから見ていないでしょうけど地球人達は『遼州人の不死人の肝臓を移植すると不死人になれる』とか言うデマが流行ってるのよ。ひよこちゃんのような法術に詳しい人がいる遼州圏ならそんな馬鹿なことは信じないでしょうけど地球圏の人はそう言う都市伝説を真に受けちゃうわけ。その一人が『神聖聖書教会』の教祖様だったということ……あんなひどい目にあわされてその教祖様の顔面を二、三発殴ってやりたいとか思ってるんでしょ?だったら肝臓くらいあげて止めを刺してあげれば?どうせその人長くはないみたいだから。自業自得と思えば安いものよ」
そう言ってアメリアは島田の方をポンポンと叩いた。その表情はいつもの何かを企んでいる時のアメリアの顔だった。
島田はアメリアの言葉を聞いた後もしばらくはその意味が理解できずにただ茫然と立ち尽くしていた。




