第211話 かえでの愛、それは体液
レールガンや対人ミサイルの置かれた兵器庫を抜け、さらに奥のシュツルム・パンツァーの予備部品の入っている区画まで来ると急に気温が上昇した。
「暑いね……島田准尉も物好きと言うか……そんなに彼は温泉卵が好きだったのかな?僕は温泉卵のように動物が生み出したものよりも人間が生み出したものが好きだよ。いずれ、誠君にも僕の作り出したもので最高のおもてなしをするつもりなんだ。楽しみにしておいてくれたまえ」
かえでは薄いコートを脱いで男装の好きな彼女らしい高貴な身分の男性が着るような薄手のジャケットと半ズボン姿になるとそう言って後ろを歩く誠に笑いかけた。
「ああ、聞きましたよリンさんから。なんでも僕の培養した僕から生理反応として出る白い液体を毎朝飲むのがかえでさんの習慣なんだそうですね……そのことを知った時は正直引きましたけど……今度は僕に何を食べさせるつもりですか?」
誠はすでにかえでの愛液入りサンドイッチを食べさせられた経験があったのでうんざりした様子でかえでに向けてそう言った。その様子にかえでは少し驚いた後、視線をカウラに向けた。
「貴様の事だ。どうせろくでもないものを神前に食べさせる気だろ?最近、貴様が寮のシェフの佐藤から乳製品を使った料理の作り方を教わっているのは私も知っている。そして、貴様の胸は明らかにこの数か月大きくなってきている。そして貴様と渡辺がある一定時間が過ぎると姿を消し、その手に小さなクーラーボックスを持って出てくるところは私も目撃している……『武悪』の最終形態が『全自動温泉卵製造器』であったように甲武の将校と言うものは食品を製造するために存在するのか?貴様はその母乳で何を作るつもりだ?」
カウラの言葉に誠の嫌な予感は半分は的中してしまった。
リンは産婦人科を専門とする意思である。女性ホルモンについても詳しい。そして、誠は理系大学の出身で生物学の一般教養課程の教授が言った『甲武の貴族は乳母と言う制度があって妊娠していない女性にも上流貴族達はホルモン剤を注入して乳児を育てる習慣が有るんだ……変な国だな、甲武って』と言う冗談を思い出してそのことくらい変態であるかえでならやりかねないことを理解していた。
「かえでさん……お気持ちはうれしいんですけど……僕にはそう言う趣味は……」
思わずそう言う誠にかえでは縋りついて泣き顔を浮かべた。
「誠君。僕の命のかけらを味わうのがそんなに嫌なのかい?今も丁度張っているんだ……なんならここで……」
そう言って上着に手をかけたかえでの後頭部をかなめが叩く。
「変態止まれ!最近はアタシに逆らうだけじゃなく神前にも回りくどくて体を張ったアプローチをするようになったんだな!かえでのくせに生意気だ!」
怒るかなめとうんざりした顔の誠を見てかえでは襟を整えて静かに深呼吸した。
「いや、僕としたことが僕の折角秘密にしていた計画がバレてしまって気が動転してしまったようだ。これからは誠君の食事に少しずつ僕の母乳を混ぜるように佐藤には言っておこう」
かえでの言葉に誠はどう反応すればいいのか分からず困惑していた。
「かえでちゃん。少しは誠ちゃんの『普通の女子が好き』と言うことをちゃんと理解してから行動に移した方がいいと思うわよ。まあ、私としてはそうしてかえでちゃんが自爆してくれるのは好都合なんだけど」
そう言って笑うアメリアを見ながら誠は『アメリアさんはまともなんですか?』と言うツッコミを封印することを心に決めた。




