第210話 『超兵器』の使い道……『温泉卵製造器』
リンの運転するバンはそのまま『特殊な部隊』の本部に乗りつけられた。
ニヤニヤ笑いながら先頭を歩くかなめのこれも余裕の表情をかえでの姉妹の妙に気の合った光景を見ながら誠はただ不安しか感じなかった。
かなめはそのまま駐車場からハンガーに直行した。
ハンガーはいつもなら甲武国が技術の粋を集めて開発したオリジナル・シュツルム・パンツァー『武悪』の『法術増幅触媒』が空気と反応して劣化する際に発する熱で真冬でもサウナ同然の有様だったのだが、今日はすっかりそのような熱気はなくなってむしろ春先の心地よい風が吹き抜けていく快適な場所と化していた。
「なんだ?いつものサウナの熱源の叔父貴の『武悪』は……あるな……ほとんど骨組みしかねえけど」
かなめは整備班員達がハンガーの中央でクレーンで右腕部関節に取り付けるアクチュエーターを取り付ける様を見ながらそうつぶやいた。
「ああ、西園寺さん達来てたんですか……これでハンガーをサウナと呼ぶ人間は居なくなりますよ!」
先輩の整備班員に指示を出していた整備班最年少ながらほとんど整備班長の島田の仕事を肩代わりしている西が誠達の存在に気付いて振り返ってそう言った。
「叔父貴の『武悪』……結局、甲武の技術で使えたのはフレームと、法術により位相転移エンジンの熱を亜空間に放出するという技術だけかよ……まったくアタシの生まれた国ながらその技術力の低さには呆れるね。それにしてもこれから昼飯の時の温泉卵、どうするんだよ。この『武悪』が来てからこいつが役に立ったのはあの熱を利用して昼飯時に簡単に温泉卵を作れることだけだろ?他に何の役に立った?何の役にも立ってねえよな。ただ暑かっただけだ。それとその肝心の温泉卵製造触媒はどこ行ったんだ?」
かなめは西に遠慮なくそう尋ねた。
「ああ、あの温泉卵を作るしか役に立たない『法術増幅触媒』ですか?どうせ来年度一番に05式乙型の『法術増幅触媒』と交換するんだから要らないから本当に温泉卵を作りやすいようにしておけと班長が言うんで、倉庫の隅に集めて先輩が今本格的に温泉卵製造装置に改造してますよ」
そうあっけらかんという西に一同はあきれ果てた。
「さすがは『サムライの国』の技術は凄いわね……実戦には何の役にも立たなくて行き着く先は私達がお昼に温泉卵が食べたくなった時にそれを作る専用の装置に兵器が化ける。あの『法術増幅触媒』を開発した技術者も兵器を戦争なんて言う物騒なことに使わずに私達の食生活の充実と言う平和目的に貢献してるんだからきっと本望でしょうね」
アメリアは甲武の軍籍のあるかなめ、かえで、リンを意識して明らかに嫌味を込めてそう言った。
「まあな、前の戦争で負けた国の作った兵器だ。兵器として役に立たなくて当然だろ?それより無駄口を聞く、廊下を走り回って邪魔、野球の試合に出ればミスを連発するような役に立たない戦闘用人造人間を戦争に投入しようとした国があったな……確か、ゲルパルト第四帝国……今はゲルパルト連邦共和国とか名乗ってるな。その失敗作の人造人間はせいぜいおいしい温泉卵で甲武の軍の恵みをたっぷりと味わうのが良いんじゃねえの?」
かなめもまた、ゲルパルトが生み出した戦闘用人造人間『ラスト・バタリオン』であるアメリアに向けてそんな嫌味を言った後、島田が居るという倉庫に向けて歩き出した。




