第208話 島田の悪知恵とそれを上回る教団の罠
誠の不思議そうな顔を一瞥したかなめはあきれ果てたような目で誠を見つめた。
「オメエ、もう島田とは半年の付き合いだろ?白石さんともだ。だったら、島田が隊を抜け出すのは簡単なのがなんで分かんねえかなあ……金に目のくらんだアイツの頭脳は叔父貴や知能指数250のアメリアをも凌駕する。というか、不良なら誰でも使う手だ。アタシも学生時代よく使った」
あっさりとそう言うかなめに一同は視線を集中した。
「バノンはいつでも島田とメールで連絡できる。島田に工場内で目立たないところで作ってもらいたい車両の設計図を渡すとか言えば絶対OKする。そっから先は島田が勝手に行動に移るんだ。アイツはまず白石さんにその来る面子の身分を説明する。当然、『神聖聖書教会』の関係者だなんて連中も名乗らねえ。適当なゲルパルト辺りの有名機械メーカーの役員だとか言えば島田に大金を渡す理由も説明がつくし、菱川重工もゲルパルトのメーカーとは取引をしている。それを白石さんに伝えればすべては終了。白石さんは独身で子供もいないからな。島田を自分の子供のようにかわいがってるから島田の言うことは絶対信用する。後は、アイツの周りにいる部下達……特に西の野郎は勘が良いから島田がまた悪いことを考えていると思って付け回すだろうが、金に目のくらんだ島田が義務感だけで動いてる西をまくなんてことは簡単だ。そして、うちのゲートを通らずに裏手の森を迂回して工場の敷地に入る。そうすれば誰も島田の事なんか気にしねえ。そこで約束の場所まで行って……実は肝臓をくれと言われて断ったらあの銃には見えない銃で脅して拉致る。そんぐらいの事はすぐに思いついて当たり前だぞ」
かなめは呆れたように誠を見ながらそう言った。
「でも、それなら今連中が動くことは考えにくいな。先ほど渡辺が言ったように今バノンの屋敷の前で降ろしている機械が腹部から水を吸い出す機械だとしたら、その行為の後にすぐに手術を行うことは……」
カウラのつぶやきにリンは腕を組んでしばらく考えた。
「常識的にはあり得ませんね。ただ、あの機械……腹部にたまった水をかなり細かく吸い出すことが出来る機能のある最新式のものだと思われます。移植手術の際にはその水が施術の障害になりますのでそれを事前に丹念に抜く準備をしているということ。そのことはバノンが予定している移植手術の日取りは来週前半……それ以降になるとまた腹水が溜まり始めるので手術には間に合いません」
そう断言するリンを見て頼れる副官の言葉にかえでは笑みを浮かべて一同を見回した。




