第207話 隊から出ない島田と接触する方法
「あれは……重要な何かを待っているんではないでしょうか?時間的に考えて昼すぎ……医療品商社の車とかは近くに見えますか?」
そう言ったのはリンだった。かなめはリンの言葉を聞くとそのまま視線を邸宅の周囲の田んぼばかりの道に目を移した。
「ビンゴだ……あの青いバンがそうじゃねえか?東和医療器。豊川の街でもあの車と同じ色の軽自動車はよく見かける。しかし、あんなでかいバンで何を運ぶんだ?」
春の日差しで暑さを感じたのか、ダウンジャケットを脱ぎお決まりの黒いタンクトップに茶色いホルスター、そしてダメージジーンズ姿になったかなめはそうつぶやいた。
「恐らく腹水を抜く装置か何かかと思われます。肝臓癌の末期になりますと腹部に水分が溜まりそれが患者の重い負担になります。ですので定期的にそれを外に排出する必要があります。その為の機械を今運んで来たとなると……バノンの病状はかなり進行していると考えるべきでしょう。来週にダミーも含めて臓器移植の施設をまとめて抑えた理由もよく分かりますね。それで、かなめ様。島田准尉のメールアドレスには何か新しい情報は入ってきているでしょうか?」
リンの問いにかなめは静かに首を横に振った。
「あんなサイトを作る島田だ。誰が見ても自己顕示欲の塊だと一目でわかる。そんな相手に前もって連絡なんかしてみろ。大金が入ると触れて回ってすべての段取りが台無しになるのは誰が考えても分かることだ。相手は宗教団体と言う『組織』なんだ。当然その中にはその程度の事を考え付く人間がいると考えるのが当然だな。島田への連絡はおそらくは直前にしてくるだろう。まあ、島田が断った時の事を考えてあの銃に見えない銃を構えた人間を島田が通りそうな場所に配置しておいてからだろうが……さっき、サラから島田と隊に着いたと連絡があった。島田はこれから『武悪』の使い物にならない甲武製のアクチュエーターを05式のものを流用したものに取り換える作業に入るそうだ。恐らく三日は隊から一歩も出ないだろうな」
遠くを見つめるカウラの言葉に誠は首をひねった。
「でも、うちの隊に入るにはまず菱川重工豊川工場の入構章が必要ですよ。そうしないとそもそもあの工場に入ること自体が出来ませんから。確かにうちの関係者と言うことで月島屋の人達は来てますけど……あれは管理部の白石さんに連絡して身元の確認をしているからであって白石さんの知らない人はうちの関係者と言うことで工場のゲートを通ることはできないはずです」
誠は隊からこの一週間一歩も出ない予定の島田と『神聖聖書教会』のメンバーがどのようにして接触を捕るのかが気になっていた。




