第202話 とりあえず昼前と言うことで
しばらくかなめが黙り込んだ。恐らく島田のメールを再チェックしているのだろう。
「そう言えば、この近くにクバルカ中佐がお勧めの蕎麦屋があると聞いているんだけれど……食事などはいかがだろう?クバルカ中佐が言うには手打ちではないらしいがなかなか舐められたものでは無いという話なんだ。価格も庶民的で僕にも是非にと言うことだが……」
かえではそう言って誠に笑いかける。その様子を完全にシートベルトを後ろの席をのぞきこみ外して誠観察モードに突入していたアメリアが大きくうなずいた。
「ああ、夏木屋ね。私もあそこのそばは好き!こっから先はしばらく食べ物屋は無いし……成畑に近づくと外国人向け価格の高くてまずい店ばかりになるんだもん。お腹もすいちゃったし行きましょうよ」
完全に乗り気のアメリアを見るとかえではそのまま誠の顔を見つめた。
「大盛……出来るんですよね?カウラさんもその方がいいですよね?」
『ラスト・バタリオン』としては考えられないほどの大食いであるカウラに誠は声をかけた。
「大盛が出来なければ二枚食べればいい。蕎麦屋ならそれぐらいできて当然だ。まあ、私は四枚は食べるのを目安にしているが」
平然とカウラはそう言うがどことなくかえでを意識するように誠の手を取って握りしめた。
「飯の話か?人が苦労して島田の馬鹿のメールチェックをしてるって言うのによ……ここ5か月の記録だが、例の大富豪から頻繁に注文とそれに対する島田の回答のメールのやり取りがある。それ以外はあの画像の『符牒』を読み取った東和国内のマニアが連絡を入れてきてるが島田が大金吹っかけて追い返してる記録があるだけ。バノンや『神聖聖書教会』っぽいのはまだ来てない……いや、たぶん東和国内からの見積もりのメールのどれかはバノンの信者が本当に島田と連絡が取れるかどうか試したんだろうな……そうなると明日明後日。動きが有ってもおかしくねえぞ……それとアタシは天もり蕎麦しか食わねえからな。よく覚えとけ」
かなめはそう言ってサングラスを直しながら運転席のリンを見つめた。
「分かりました、夏木屋ですね。あそこはクバルカ中佐に言われた通り分かりやすい場所にあるそうですから嫌でも目につくと思いますよ」
リンはそう返して信号が変わって走り出した軽乗用車の後ろを静かに走った。
「どんな蕎麦かしら?おいしいと良いわね。まあ、ランちゃんが納得するぐらいなんだからおいしいに決まってるんでしょうけど」
アメリアは笑顔で誠、かえで、カウラの順に見つめてその度に笑顔を浮かべる。
車はそのまま51号線を進み左倉市に入った。




