第200話 小学生レベルにして最強の『符牒』
「車マニアにしかわからねえような『符牒』ねえ……だってこのサイトのトップ。車と文字しか写ってねえじゃねえか。アタシは車はパワーがあってちゃんと曲がって止まれて、そして多少のオーディオ機器がついてりゃなんでも同じだからな……」
電子の脳内で島田のサイトの扉とにらめっこしているらしいかなめは目をつぶったままそれだけ答えた。
「カウラちゃん。カウラちゃんの車の趣味って島田君と似てるじゃない?この車も島田君が惜しそうな顔してカウラちゃんにあげた車だし、隊長の乗ってる『ファミリア』もカウラちゃんの趣味。そして、パーラが車を替えたいと言ってきたときもカウラちゃんが選んであげてそれを島田君が見てた。カウラちゃんなら島田君が『分かる人だけ連絡して来い!』と言うような『符牒』の意味が分かる気がするのよ」
中間座席の広さに足を延ばして寝そべっていたアメリアが後部座席のカウラにそう言った。
「そうか、少し待ってくれ」
カウラはそう言うと携帯端末を取り出し島田の個人サイトを開いた。
『司法局実働部隊技術部整備班!』の大見出しの下には無数の車の写真が映し出されていた。
「あれ?島田先輩ってこんなに車を作ったんですか?それにこの車全部20世紀の日本車しかありませんよ。今作ってるのは『シボレー・コルベット・C3』だとか言ってましたから……なんか島田先輩が作る初めてのアメリカ車だとか言ってましたけど、写真にはアメリカ車なんて一台もないじゃないですか」
カウラの端末を覗き見ながら誠はそうつぶやいた。
「確かに日本車しか無いな……まず、『セドリック』が初代から10代目まで……アイツはセダンは作らないとか言っていたはずだぞ?そして次が『フェアレディ―Z』。これは初代から4代目まで。そして『スカイライン』。これも初代から10代目まで……アイツはいったいいくら車を作れば気が済むんだ?」
呆れたようにカウラはそう言って苦笑いを浮かべた。その様子を聞くと誠の反対側のかえでが分かったというように手を打った。
「なるほど、彼の頭で考え付く『符牒』分かりやすくて一目瞭然だね。確かに現代の東和の人間や20世紀日本に知識のない地球のハッカーたちがいくら島田准尉に迷惑メールを送っても彼が見向きもしなかった理由は簡単に分かったよ」
誠が声の主のかえでを見てみるとかえではカウラと同じように端末を開きつつ、別の画面を開いていた。
そこには写真の車の製造メーカーを調べるアプリが起動していた。
「『セドリック』、『フェアレディ―Z』、そして『スカイライン』。どれも日産自動車の製造した車だ。つまり島田君の『符牒』は題名に『23』の文字を入れろ。と言うことだ。それ以外は一切無視する。なるほど、彼の小学生並みの頭のレベルから考えればすぐに考え付く……そして20世紀日本の車事情に詳しくないマニアには絶対に分からない『符牒』だ。単純すぎるから効果的……ある意味彼は天才なのかもしれないね」
そう言って笑うかえでを見て誠は改めて島田の馬鹿さ加減とそのあまりに馬鹿であるがゆえに誰もそんな事は考え付かないという発想に気付いて苦笑した。




