第199話 自動車マニアにしかわからない『符牒』
車は農道を抜け、そのまま成畑に向う国道51号線に入る合流部にたどり着いた。
「それならば何か『符牒』のようなものをタイトルに付けているのではないでしょうか?かなめ様、あの男のサイトにそれとわかるような書き込みがあるかどうか確認してみてはいかがでしょう?」
ウィンカーを左に出しながらリンが運転席からそう言ってきた。
「『符牒』ねえ……あの馬鹿にそんなことを考えるおつむがあると思うか?でもまあ、一応確認してみるわ」
昨日も誠に夜這いをかけようとしたリンにワンマガジン銃弾を浴びせてそのすべてをリンの展開する干渉空間に防がれて気が立っているかなめはそう言うと仕方なく目をつぶりネットとアクセスし始めた。
「確かにな、アイツは一応は地球の大富豪と連絡を取ることが出来た。東和では地球からのメールなどほとんど届かないし、そもそもそれが届いたとしてもそのほとんどが遼州嫌悪の思想に塗れた愉快犯のウィルスメールなのは事実だからな……それをかいくぐって島田があの大金を手に入れる為のファーストコンタクトを取れなければそもそも島田はその大富豪のメールアドレスをお気に入り登録することができない。しかし、そこになにがしか……島田しかわからない島田に特別の用が有るということを示す『符牒』があれば話は違って来る……バノンの信者も島田の存在に気付いたということはその『符牒』を理解している可能性は非常に高い」
誠の方を見ながらカウラはきっぱりとした口調でそう言った。
「でも、島田先輩ですよ?あの人にそんな頭を使う用の事が出来ると思います?」
自分を見つめて来るカウラに誠は照れながらそう返した。
「誠君。君は島田准尉を少し舐めすぎているようだね。たぶんあの薄汚い男と接する機会が多すぎて彼の馬鹿さ加減に触れる機会が多かったからそう見えるのかもしれないね。島田准尉は普段は君が指摘するように果てしのない馬鹿だが、仕事に関することや自分の利益になることの為ならば天才的な頭脳を発揮する。誠君以外の男と言う物を性の対象としか見ない僕には島田准尉を感情を入れずに客観的に評価できるからそう見ている……お姉さま。それらしい何かがあるんじゃないですか?例えばトップ画像に映っている車の車種とその色……そんなところに実に奇妙な普通では考えられない規則性があるとか……車好きでそれに対する愛情がきわめて深い人間なら理解できるが、車を知らない人間にはまったく意味不明の規則性……島田准尉の考えそうな『符牒』はそんなところなんじゃないかと僕は思うけどどうでしょうか?」
かえでの指摘で誠は我に返った。島田が売りたいのは車である。しかも、ただのニワカのマニアとは口もききたくないと日頃口にしている島田ならそのようなことを考え付いても不思議ではない。かえでの鋭い指摘に誠は彼女の洞察力にただ感心させられていた。




