第197話 ないがしろにされる『本日のヒロイン』
「あのー、良いかしら?私も着替えたいから出てくれるとありがたいんだけど」
そう言って助手席のドアを開けて顔をのぞかせたのは今日の勝利投手であり、打っても一本のホームランと日本のヒットで京の死君車ともいえる水色のベリーショートの髪がトレードマークのパーラだった。
「ああ、パーラ。オメエは着替え無し。そのままオメエのランエボで寮に戻ってそこで着替えろ。アタシ等はこの車で島田の馬鹿の肝臓を欲しがってるこっちも島田並みのネットのデマに踊らされてる教祖様の顔を拝みに行くから」
あっさりとかなめはそう言ってパーラをにらみつけた。
「なによ!それ!これは女子の着替えのために借りた車でしょ?それとなんで誠君がここに居るの?じゃあ、私も着替えるから……誠君になら見られても平気」
そう言うとパーラは無理やりにでも乗り込もうと甲武のスライドドアに回り込もうとした。それをかなめが飛び出して強引に阻止する。
「分からねえ奴だな。アタシ等の仕事はなんだ?警察官だ。犯罪を取り締まるのが仕事だ。法術師……特に不死人の臓器を地球人に移植するのは立派な犯罪だ。それを未然に防止する……つまりこれは仕事だ。オメエがここで着替えをしてその出発を遅らせる。これは仕事の邪魔だ。アタシ等の野球はあくまでレクリエーションであって仕事じゃねえ。何事も仕事優先だってことを忘れるな」
鋭い口調のかなめに窮屈そうな着替えを終えたアメリアが拍手を送った。
「まあ、かなめちゃんから『仕事優先』なんていう素晴らしい言葉を聞けるとは思わなかったわ!と言うわけだから……パーラ。諦めて。それと今日の祝勝会は今日は月島屋は定休日だから寮の食堂でやるから。かえでちゃん、料理とお酒の手配は済んでるわよね?」
アメリアはそう言って胸のあたりに手をやって何かを気にしている様子のかえでに目をやった。
「僕に抜かりがあると思うかい?佐藤にはすでに今日の勝利にふさわしい料理を用意するように伝えてある。それにたまには皆で僕のおすすめのワインを飲むというのも趣向が変わっていていいだろう?」
笑顔のかえでとそれにうなずくリンを見てカウラはため息をついた。
「貴様等は仕事優先とか言いながら遊ぶことだけはきっちりしているんだな。そこだけは感心させられる」
そんなカウラの態度を見てここにいる女性陣はパーラへの思いやりと言う心がまるでないことに気付いて誠は同情の視線を車外でユニフォーム姿で取り残されているパーラに向けた。
「いつもこんな扱い……勝ち投手?あんな試合に誰が投げても同じじゃないの……分かってるわよ。私はそう言う星の下に生まれたんだものね……誠君。きっとこんな思いやりのない人達から救い出してあげるから安心してね」
そう言うとパーラはそのまま諦めて自分の愛車の黄色いランサーエボリューションに向けて歩き出した。




