第196話 教祖との対面を望む関白
「それよりお姉さま……島田准尉の携帯に何か連絡は?」
最初に着替えを済ませた後、その場を立ち去ってリンと何かをしていた後に帰って来たかえでがかなめに向けてそう尋ねた。誠にはかえでが姿を消す時に限ってリンが必ず小さなクーラーボックスのようなものを持っているのが不思議だったがそれはとりあえず忘れることにした。
「ああ、そっちか?今のところ動きはねえな。それより今日は月島屋が休みだ。だから昼飲みは出来ねえ……そのバノンの居所……そいつをつきとめてやろうじゃねえか」
自慢のGカップの胸を揺らしながらかなめは得意そうにそう言って誠を見つめた。誠はその黒いレースの妖艶なブラジャーを見て顔を赤らめて目を逸らした。
「西園寺。神前を誘惑するな。それとだ、バノンの居場所と思われる場所は三か所だ。日野の言う通りバノンの死の手術が行われるのが左倉国立病院と特定できたとしてもバノンの居場所は特定できていない」
冷静を装いつつカウラはそう言ってズボンに履き替えつつある誠に目をやった。そのカウラを見て誠はカウラが送って来た昨日の無修正動画の内容を思い出して思わず目を逸らした。
「舟橋……コイツはねえな。左倉まで行くのに確かに国道一本だが、あそこの渋滞は有名だ。病人を長い事車に乗せとくわけにはいかねえからな。八町……これは八町総合病院がその手術の場所になると考えるだろうという場合のダミーだろう。となるとどうしたって成畑が怪しい。リン!この車、夕方までレンタル延長は出来るよな?」
かなめはいつも通りの黒いタンクトップにダメージジーンズの姿に着替えるとタバコをくわえてリンにそう言った。
「できますが……かなめ様。それ以外の可能性は考えないのですか?しかも、これはあくまでここ数か月でのバノンの邸宅にふさわしい住宅の取引データから引き出した結論であって、もしそれ以前にバノンに協力したいという東和住民がいた場合にはそもそもが……」
大事そうにクーラーバックを抱えながらリンはかなめに反論した。
「なあに、島田の肝臓を欲しがるような馬鹿だぜ?バノンは。そんな奴に協力する馬鹿がこの東和に居るか?それに奴もこの国に長居はするつもりはねえんだ。恐らく手術が済んだら成畑の空港からこの国をおさらばする……そう考えるとあそこが一番隠れ家としては都合がいい。ただ都合が良すぎるから実際にそうなのかこのアタシの目で確認してやる。ただそれだけの話だ」
かなめは得意げにそう言うとタバコの煙を大きく吐いた。その隣では狭いバンの車内で長身を折り曲げて苦労して着替えをしていたアメリアが呆れたような様子で黙ってかなめを見つめていた。




