第194話 勝つためには手段を選ばない女監督
「と言うわけで……あとはあのバノンとか言う変な妄想に取り付かれた死にぞこないの信者が島田の馬鹿を金で釣り上げようとする連絡を入れて来るのを待つばかりだというわけで……」
かなめは満面の笑みで誠達を見回した。
「明後日。『熊川運輸』戦では神前はファーストを守れ」
突然の誠の言葉に一同は絶句した。
「西園寺。さっきから大人しいと思ってたのは明後日の野球の試合のオーダーを考えていたからか?貴様は本当に仕事より野球優先なんだな」
呆れたようにカウラはそう言いつつ、おそらく自分が先発を任せられると思って緊張した面持ちをしていた。
「なんだ?悪いか?ちなみに先発は島田で行く……まあ、アイツはノーコンだから二人ファーボールを出したらそのままセンターに下げる。そしてロングリリーフは……聞いて驚くなよ……パーラだ」
意外なかなめの一言に一同は唖然とした。
「お姉さま。確かに島田准尉はコントロールは絶望的。ようやくカーブを覚えたが二球に一球はすっぽ抜ける。僕も正直彼の球を受けるのはうんざりだ。そもそもキャッチャーとしてサインを出すだけ無駄だからね。ファーボール二回縛りなら初回で彼はマウンドを降りることになるよ……それとパーラ君だが……彼女はコントロールはいいが球威がない。しかし、彼女のカーブは意外と使い道がある。それに『ラスト・バタリオン』だけあって度胸も据わっている……いっそのこと先発は彼女でそのまま……」
かえでの助言に手を打つとかなめは手元のメモ帳に誠には読むことが不可能な書体でメモをした。
「ああ、それでいくか……明後日の球場……『豊川大日球場』は狭いからな。バットも球場備え付けの飛ばない金属バット以外は使用不可。それでもうちとか『菱川重工豊川』とか『千要マート』のクリーンアップはバカスカフェンス越えをするからな。アメリア!オメエはノルマで5本ホームランを打て!あそこはこれまでもあそこでのホームラン数はオメエが一番多いんだ。普通の球場なら平凡な外野フライがあそこではホームランになるからな。島田が2本、神前が3本、そしてその他が5本打てば……どうせ貸し切り時間前に時間切れでうちが勝つ。去年のうちが5位だったのは4位の『土田鉄工所』に勝ち点では並んだのに得失点差で負けたからだ……今回は『熊川運輸』のワンマン社長の100キロ以下のノロい球が相手なんだ……確かにあそこは守備はいいがあの絶対にマウンドを譲らない爺さんの球を全部フェンス越えすれば点数はいくらでも稼げる。今回は価値は当然!目標は20点差以上の点差で勝つ!これで決まりだ!」
そう言ってにんまりと笑うかなめを見て誠は思った。
『この人は鬼だ……きっと15点差付いててもバッターがアンとかで三塁にランナーが居たらスクイズのサインを出すぞ……西園寺かなめ……恐ろしい女……』
誠はそんなことを思いながらただひたすら無邪気に笑う非道な監督であるかなめに呆れ果てていた。




