第193話 『島田正人』……自らプライバシーゼロの人生を選んだ男
「これだ……こんなに個人情報を晒してるサイトなんてアタシは見たことがねえぞ。あの馬鹿……これを見ていたずらメールや迷惑メールを送ってくる対策とかどうしてるんだ?まったく理解できねえよ」
かなめは全員が集まったところで自分の端末の大きなモニターを指さしてそう言った。
そこには数多くのこれまで整備班が『技術維持』と称して作った20世紀の名車の写真と作成責任者としての島田の上半身の写真。そしてでかでかと島田の携帯端末の番号とメールアドレスやその他島田の登録しているサイトのアドレスが列挙されていた。
「あの人……やっぱり馬鹿なんですね。電話番号もあってますし、メアドもこれ島田先輩の個人アドレスですよ。そもそもこれだけ恥ずかしげもなく堂々と連絡先を書かれると逆に胡散臭く感じて怪しい人達も連絡してこないんじゃないですか?だからあの人特に日常生活で困って無いんですね」
島田の無神経なサイト設計に呆れるとともに怪しいを通り越して作った人間の神経を疑うようなそのサイトの画面に誠達はあきれ果てていた。
「なるほど、でもこれだけ馬鹿みたいに連絡先が表示されているとなると……あの慎重なバノンも連絡してこないんじゃないかな?」
あまりの自己顕示欲の塊のような列挙された連絡先を見てさすがのかえでも引きながらそう言った。
「そう?というか、このサイトの存在は私も知ってて意外とマメな島田君がどう見ても不死人じゃなきゃ不可能な日常生活を送っていることが克明に記されているから……一か月一睡もしないで平気だったとか、腕がちぎれたけどくっ付けたら直ったとか……あのネットに流れるデマを信じてわざわざ地球圏に死にに来たようなバノンだもの。これを見て島田君が不死人であることに気付いたんじゃないかしら?ああ、恐らくバノン本人じゃなくて信者の一人が。これだけ連絡先がオープンで不死人であることが明白な人間はたぶんこの宇宙に島田君一人だと思うわよ」
アメリアはさもそれが当然というように誠達にそう言った。
「つまり、島田の携帯端末への連絡記録を常に監視していれば必ずバノンはそこに連絡を入れて来るということか。島田は金が絡むとどんな無茶でも平気でするからな。我々の護衛を振りほどいて逃げ出して単独で『神聖聖書教会』の関係者と接触する可能性は十分にある」
カウラもまた島田の金に汚いところは十分知っていたので納得したようにうなずいた。
「さっき、島田のアドレスとその他連絡手段のすべてにアタシが枝を付けた。島田に入る連絡はすべてアタシには筒抜けだ……どうせ何も考えずにこんなサイトを立ち上げて悦に入っている島田だ。アタシがそれを全部監視しているなんて言うことには絶対気付かねえ……あの馬鹿にどのタイミングでバノンがどういう形で会おうとするか……楽しみに待とうじゃねえか」
そう言って笑うかなめは誠が恐れる『殺戮マシン』の顔をしていた。
『西園寺さん……三谷の事件で銃が撃てなかったから今回は撃つ気だ……面倒は御免なんだけどな……』
誠はどんな形であれこの事件にかなめが関わる以上平穏な解決は望めないと諦めた。




