第192話 お金で苦労したことの無い人には絶対出てこない発想
「さすがクラウゼ中佐……僕のようなお金にこだわりのない人間には無い発想だ。それはまったくの盲点だったよ……リン、そう思わないかい」
かえではアメリアの島田と嫌でも年中顔を合わせている誠なら簡単に思いつく回答に気付かなかった自分を恥じていた。
「はい、私もその発想は有りませんでした。女郎時代は自分でお金をもらうことなど無かったですし、かえで様に拾っていただいてからはかえで様のご支援でお金と言う物にはあまり関心がありませんでした。それに現在では弾正尹としての官位とそれのもたらす所領により私自身あまりお金の重要性を感じていないので……なるほど、庶民と言うものはそう言う物なのですね。公家貴族であるかえで様や武家貴族である私にはとても出てこない発想です。ただひたすら感服させられました、クラウゼ中佐、そして誠様。ご教授大変感謝しております」
そう言ってリンは丁寧にアメリアと誠に頭を下げた。
『この人達……お金で苦労したこと無いのはよくわかるけど……でもそこまでお金と無関係に甲武って生きられるの?平民はお金の苦労で大変だって西園寺さんは言ってた……ああ、西園寺さんは二人より金持ちだけどお金には汚いからな……たぶん西園寺さんなら……』
誠はそう思うとかなめの座っている席に目を向けた。そこには予想通り当たり前の話だというような顔で笑っているかなめの姿があった。
「確かに島田が金に汚いのは事実だ。しかし、その金銭の授受に関してどのようにバノンは島田と連絡を取るんだ?島田の周りには常に隊の誰かが付き添っている。信者を使者として差し向けたところで追い返されるのが関の山だ。それとも何か?バノンは島田へ簡単にアクセスできる手段でもあるというのか?」
真剣な顔でそう言うカウラに大きなため息をついたのがかなめだった。誠がちらりと機動部隊長の机を見るとランもまた大きなため息をついた後苦笑いを浮かべていた。
「おい、オメエ等全員こっち来い。島田と言う男がいかに考え無しの馬鹿でなんで地球からアイツにフルスクラッチカーの注文が絶えないかと言う理由をアタシがはっきり見せてやるから」
かなめはそう言うと誠達に自分の席に来るように手を振った。
「確かに不思議ですよね……地球圏からこんな豊川の田舎町の一司法執行部隊の隊員に地球でも屈指の大富豪が連絡を入れて来るなんて……ネットに上げたと言っても動画サイトとかからでしょ?東和の動画サイトは地球からは見るのがほとんど不可能な上にたとえ見ることが出来ても運営が絶対にそのあげた人間の個人情報を漏らしませんから……どうやって先輩は地球の大富豪と連絡を取るようになったんだろう?」
誠は疑問を口にしながらかなめの言われるがままにかなめの席に向って歩き出した。




