第185話 変質した公安調査庁
「じゃあ、なんで今回こんな事態になったのか……そこで元公安調査庁の武装部隊の隊長だった秀美さんに聞いてみたんだけどさあ……秀美さんってば『もっとして!』とか『良いの!最高!』としか言わないのよ……どう思う?」
嵯峨の言葉にランは一気に絶望の淵に突き落とされた。
「おめー、話を聞くタイミングとか考えたことあるのか?何の最中にそんな深刻な話してるんだ?それにそんなことをしていることをアタシみたいな幼女の前で言うべきことだと本気で思ってるのか?一遍死ねよ」
吐き捨てるようにランはそう言うと呆れ果てたという顔で嵯峨をにらみつけた。
「ああ、それが終わってからももう一度聞いたから大丈夫。それが言うにはね、まあ秀美さんは公安調査庁の任務に関する記憶は全て上司に専用の義体とともに返納しちゃってるから日常会話とか同僚の顔とか当たり前の事しか覚えていないんだけど、それだけからでも公安調査庁よりもたとえあの街に詳しいあの街唯一のまともな弁護士として知られた茜の方が情報が早かったことなんて考えられないというんだよ。そりゃあ、そうだ。俺も戦争を始めた国の大使館付き二等武官としてこの国に入ったとたんに新米の俺でも分かるような尾行が3人はついてきてた。秀美さんが言うには他にも8人は俺の行動を監視していた人間がいるだろうって言うくらいだから……当時の公安調査庁を知る人間としては今回の三人が何の尾行もされずに不死人だらけの街をうろついてたこと自体がおかしいと秀美さんは言うんだよね」
嵯峨は再び真面目な顔に戻ってランを見つめた。
「そもそもだ、公安調査庁の行動はこの5年でおかしくなってる。一番使えるエースの秀美さんを惜しげもなく司法局に出向させた。まずこの時点で戦時中のこの国のあの組織を知ってる俺からすると理解不能な行動だ。そして、どうしても任務上情報共有が必要になる秀美さんがダメもとで色々と元部下達に連絡を取るとペラペラこれまでだったら絶対に外部に漏らしちゃいけないような情報をくれて便利なんだそうだ……まるで誰かの監視が解かれたようだ……秀美さんは部下達と話していてそう思ったそうだ……そう、『誰か』の」
その言葉にランはその人物を一人しか思いつかなかった。
「『ビッグブラザー』か?しかし、奴は公安調査庁などの情報機関を操作してこの国……いや、この銀河に影響力を保持している。それが奴の唯一の行動手段……それがなぜ5年前にいきなりその中でも一番忠実で信頼できる公安調査庁を切ったんだ?」
ランの問いに嵯峨は再びタバコの箱を取り出して手に持つと一本タバコに火をつけた。




