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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 不死人と謎の教団  作者: 橋本 直
第三十九章 風俗街の守護神と『ビッグブラザー』 
184/232

第184話 永遠の命を持つ絶対権力者の生み出す害毒

 嵯峨はタバコを揉み消し胸の前に手を組むと珍しく真剣な表情でランを見つめた。


「まず聞くが、ランよ。茜が不死人探しをしているアメリカ人がこの東和をウロチョロしている……その話が島田の事故や茜の言葉でしか俺達の耳に届かなかった……いや、そんな目的のアメリカ人が東和を誰の監視も受けずに歩き回ってる。その事実を知った時、どう思った?」


 その珍しくまじめな質問にランは言葉を失った。


 この400年間。法術の存在は伏せられてきた。地球圏がその研究を始めようとした途端、東和お得意の電子戦でその研究データそのものが消し飛ぶので地球圏も法術の研究自体をすることが出来ないでいた。


 さすがに自国に信託領ジャパンを抱え、日本人と同じ顔と同じ言葉と同じような考え方をする遼州人が居住しているアメリカは独自に研究を進めていたが、それ以外の国は蚊帳の外。その研究が一番進んでいるアメリカですら、より多くのデータサンプルを得るために東和や遼帝国に接触を試みようとしたことはあるらしいが、それが実行に移されたという記録すら残っていない。


「公安調査庁が仕事をサボってんじゃねーの?そうでも無きゃ、連中はあそこのお得意の電子戦で遼州行きの亜空間航行船の乗船チケットすら買えねーだろーからな」


 ランに思いつく最初の回答はそれだった。


「そうなんだよね。島田の件はどうでもいい。島田は何をされても死なないし、どうやらネットのデマを信じて島田の生き胆を食らうけったいな新興宗教の教祖は死ぬ予定みたいだから何の問題も起きない。でも、茜が直接追ってた三人。あれはヤバい。東和にとって……いや、遼州圏にとって致命的な失点になる」


 相変わらず難しい表情で嵯峨は話を続けた。


「21世紀半ば。打ち続く核戦争の最中に大統領の任期が切れるのはまずいということで大統領の再選制限を撤廃した。でも、地球人はいずれ死ぬ。だから、これまでの最長在任期間は20年と言うのが地球人の寿命での一番長いものだ。地球人は権力を握るとそれを自分一人に集中させるという習性があるから、そいつの時にもかなりの権限が大統領に集中し、今じゃ、議会は有名無実。大統領の行動に間違いがあった時責任を取らされるだけのお飾りの組織に落ちぶれている……あの国は大統領を絶対君主としていただく君主制の国……議員なんて言うのはそれに忠誠を誓う家来みたいなもんだ。今でさえそんな状態なんだ」


 嵯峨はそう言うと残忍かつ冷酷で悪意に満ちた策士らしい笑顔を浮かべた。


「たった20年の任期でそれだけの事が出来る。それが数十年……数百年……いや、地球が滅びるまで永遠に続くとなったらどうなる?その欲に塗れた権力者は何をすると思う?その時……そいつはこの東和、そして遼州圏に何を働きかけると思う?当然、公安調査庁もそのことくらい考えてるさ。一、独立愚連隊の隊長である俺ですら思いつくことだもん。選ばれたエリート連中の中でもさらに選ばれた存在である公安調査庁の幹部たちにそれくらいの想像がつかないわけがない」


 そう言って笑う嵯峨の言葉にランはひきつけられた。

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