第176話 幼女と逆援助交際をする中年の若者
「おい!『駄目人間』!居るか!」
無遠慮にノックもせず悩む嵯峨の居る隊長室に入って来たのはどう見ても8歳くらいにしか見えない警察官の格好をした幼女だった。その鋭い眼光以外はどう見てもお子様。彼女が見た目は立派な大人に見える嵯峨の部屋に堂々と入ってくるのはいつもの事なので嵯峨は相変わらず呆然としたまま虚空を見つめていた。
「なんだよ、ラン。俺はいまピンチなの。一番バレちゃいけない秘密があの堅物の茜に全部バレちゃったみたいなんだ。俺はその対策で脳をフル回転させなきゃいけないんだから面倒な話なら後にして。一見何もしていないように見えて俺はいま人生で一番忙しい瞬間にあるの」
嵯峨は入って来た司法局実働部隊、通称『特殊な部隊』の副隊長であり、その『特殊な部隊』の売りと言ってもいい人型機動兵器の運用を一手に任されている機動部隊長を兼務しているクバルカ・ラン中佐にそう言うと静かにうなだれた。
「そんなの自業自得だ。それに今は勤務中だ。親子のもめ事の対策を練るための時間じゃねーんだ。あのお蔦が来てから見た目だけはまともになって風俗通いもやめたから変な病気を隊に広めることもなくなったと安心してたら今度は何があった?どうせアレだろ?逆援助交際で無い金を稼いでいたことが茜にバレてさっき通信が入って説教するから待ってろと言われたのか?馬鹿だろ?オメーは」
ランは情け容赦のない言葉で上官である嵯峨を罵倒した。その言葉に嵯峨は驚愕の表情を浮かべる。
「なんでランがそのこと知ってるの?アイツの性格からして身内の恥をお前さんに告げ口するなんてことはありえないよ……お前さん俺の知ってる以上の法術……読心系の奴って使えるの?そりゃあ、遼南内戦で俺がお前さんを相手にしたら逃げ回るしか手が無かったわけだ」
嵯峨は心底驚いた様子でランに向けてそう言った。ランは大きくため息をつくと嵯峨を軽蔑するような視線でにらみつけた。
「隊長。アンタが金を稼ぐことで考え付きそうなことでこれまでアタシにバレなかったのは他にねーからな。違法カジノ?やってたな。マルチまがいの商品の転売行為?これも島田の馬鹿が隊長が妙なことを初めて整備班の風紀が乱れてると告げ口してきた。他には贋作の骨董品に極め書きを書いて本物だと言って金持ちに売りに行く……あん時だけはアタシも自分の首になるのを覚悟したくらいだ。そうなったらオメーがやって無くて、しかもオメーなら考え付く金儲けの手段と言ったらマダム相手に身体を売るくらいの事しかねーだろ。幸いこの国は未婚率80%。金を持ってるオメー好みの熟女が性欲を持て余して男を待ってる。で、いくら稼いだ?言ってみろ?オメーの事だからそのマダムの身ぐるみ剥いで自分の屋敷に愛人を一人余計にこさえるくらいの事はやりかねねえ。大問題になる前にアタシがなんとかする。正直に言え」
右手をしっかりと握りしめ、軽蔑と怒りに頬を震わせながらランは目の前の『若い燕』にしか見えない40男に向けてそう言い放った。




