第172話 選んだ先……そこに待つもの
「私は……」
シンディーはそう言って田代の目をじっと見ていた。
「別に俺はこの街で永遠に生き続けるってもの悪いもんじゃねえと思ってる……そいう風に生まれちまった。そして外の世界に出ても続くのはどんな生活だって言うのは軍に居た頃に十分知ってるよ……まあ、一人で生きるってのに慣れちまってね。今日は、楽しかった……この楽しい日……いつまでも続くかどうかを選ぶのはアンタだ……俺じゃない」
そんな田代の言葉をかなめもカウラも黙って聞いていた。
「なあに、アンタも田代も英語が出来る。この国は地球の各種市場に介入することでこの異様なほどに格差のない福祉国家を実現してきた。そん時にはどうしても英語が出来る人間が必要になる。英語教師の需要……結構あるんだな……この東都ならそんなのいくらでも見つかるが、地方に行ったら英語が出来るような人間を見つけるなんて絶望的だ。なんと言っても街を歩いている人間のほとんどが不死人の農家や漁師の兄ちゃん姉ちゃんか年を取る人間は市役所の職員と警察官くらいしか居ねえんだからな。地方で死ぬ人間はそのまま市役所に入るか県警に入るかそれとも軍に入るか……東都に出る?そんなのブラック企業で永遠にこき使われて終いだ。この国が地球の富を吸い上げてる高級官僚が出向している政府系ファンドや金融系の上場企業に入ろうと思えば今アタシ等が話してる程度の英語は出来て当然……地方の連中も田舎で朽ち果てる人生には飽き飽きしてるんだよ」
かなめはタバコを吸いながらそうつぶやいた。
「金はオメエの飼い主から相当の金額を貰ってるんだろ?それならその金を元手にすりゃあいい。そして相手の田代はお前が良いと言っている。そして、どうやって生きていくかの手段ならさっき一例を挙げたがいくらでもある。それを選べばオメエはあの呪われた星地球から自由になれる……そして手に入れるのは永遠の命……まあ、地球圏の軍の事情についてアタシが時々連絡を入れるからそれについて答えてくれりゃあ助かる程度の話なんだ。どうなんだ?決めるのはオメエだ」
タバコを手に持ったままかなめはシンディーに目を向けた。カウラもまた腕組みをして三人をかわるがわる見回すシンディーを見つめている。
「合衆国がこの事態を黙ってみているのかしら?軍は私の知っている法術に関する知識を恐れている……その点の保証は出来るの?」
そう尋ねるシンディーの顔は答えは出ているがそれを押してくれる何かのきっかけが欲しい時のような顔をしていた。かなめはその表情に勝ち誇ったような笑みを浮かべた。




