第171話 与えられた選択肢は二つ……死か、永遠の命か
「私が田代に選ばれた?それはどういう意味かしら?」
シンディーは訳が分からないというように田代を一瞥した後、かなめに目をやった。
「それは私から言おう。田代は貴様を伴侶と選んだ。今回我々はあの二人は訴追するが、貴様には逃げられたということで法術特捜主席捜査官とは話がついている。そして、これがその選ばれたことを活かすために必要となる書類だ」
そう言ってカウラがハンドバックから取り出したのは在東和アメリカ合衆国連絡事務所と大東区役所の婚姻届だった。
「なによ、これ。私にこの男と結婚しろって言うの?さっき会ったばかりなのよ……って今の私には他に選択権は無いと言いたいわけね」
シンディーは英字で書かれた結婚届を見ると諦めたようにそうつぶやいた。
「そうだ。オメエにはもう選択権は二つしかねえ。他の二人と同じようにアタシ等の手で東和警察に突き出されるか……この書類を明日二人して役所に提出してその後の連絡先をアタシ等に知らせることを条件にこの東都から出ていくか……良いじゃねえか。他の二人の女はもうすでに懲役10年と国外追放と本国での野垂れ死にする運命が決まってるんだ。その点、オメエにはそれ以外の選択肢がある。しかもその選択肢にはオメエの飼い主がご所望の宇宙最強のアンチエイジング処置を独占的にタダで受けることが出来るというおまけつきだ……いいんだぜ。べつに野垂れ死にがご所望ならそれを選ぶがいいさ。アタシの叔父貴……オメエ等が『三好大蔵』と呼んでる男は永遠のアンチエイジングよりそっちを選べと言うだろうが……アタシも女なんでね」
そんな余裕のあるかなめの態度にシンディーはまじまじと連絡事務所宛の結婚届を手に取って眺めた。
「でも、いくつか質問が有るんだけど……」
震える声でシンディーはかなめに話しかけ、そして田代に目をやった。
「その質問に答えるより先にオメエはどちらの運命を選ぶか決めろ。たぶん野垂れ死にを選ぶ人間にはその質問には答えられねえ。オメエも軍籍があった人間なら分かるだろうが。オメエが野垂れ死にを選ぶんならオメエは敵だ。敵の質問には黙秘する。そりゃあ軍人の基本だわな。それに対して永遠のアンチエイジングを選べばオメエはアタシ等の身内になる。身内の質問に答えねえのは人でなしだ。だからその場合は何度でも好きなだけ答えてやる……当たり前の話だろ?違うか?」
かなめの声ははっきりとシンディーに決断を迫っていた。
シンディーは田代を見た。田代はそのまま少し微笑む。その微笑みにシンディーは微笑みを返すとそっと田代の筋張った手を握った。




