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第170話 任務失敗の代償と選ばれた存在

「確かに……あの街では私達は目立ち過ぎたわ……でも合衆国は白人のプロテスタントとユダヤ教徒以外には軍人になる手段がほとんどない……『近藤事件』以来、東和への工作のために信託領ジャパンに住んでる遼州人を軍に採用し始めたけど……今の段階では……あの方が不死人になるべきタイミングにはとても間に合いそうにないわ」


 シンディーはかなめに向けてそう言って両手を広げた。


「まあな、『東都戦争』の時も米軍の特殊部隊の連中はみんな白人ばかりだから目立って仕方がなかった。まるでアタシ等から見つけてくださいと言ってるようなもんだ。だから全員殺したよ。女も5人ほど殺したがどんな顔をしてたかは覚えちゃいねえ。その顔面に鉛玉をぶち込んで終いだったから見る暇もなかった」


 かなめはそう言うと吸い終えたタバコを灰皿に押し付け、そのまま次のタバコに火をつけた。


「クイーンイングリッシュを話す……脳内で翻訳機能を使うということはあなたはサイボーグね。しかも今の所属は司法局実働部隊……もしかしてあなたは『甲武の山犬』?」


 シンディーから懐かしい自分の二つ名を聞いたかなめは満足げにうなずいた。


「へえ、実戦にも出てねえひよっこの特殊部隊員でもアタシの事を知ってるんだ。アタシも有名になったもんだ……まあ、アタシより叔父貴の二つ名の方が米兵にはトラウマものかもしれねえがな」


 そう言うかなめの言葉にシンディーはバスローブの身じまいを正すと真正面からかなめを見つめた。


「司法局実働部隊……その隊長は嵯峨惟基……前の戦争では『三好大蔵中佐』の名で大戦末期、治安維持すらおぼつかなくなった遼帝国で当初はゲリラ狩り、そしてのちには遼帝国崩壊を狙っての合衆国や遼北人民解放軍の特殊部隊相手に無敵を誇った『屍者の兵団』の指揮官……」


 シンディーは自分の置かれた立場を完全に理解したというように静かにうなずいた。


「そんな昔話よりも今は自分の立場を考えな。オメエは運がいい。何しろオメエ等三人は最初にオメエ等の存在に気付いた司法局にお縄になったんだ。オメエは別として他の二人は今頃、司法局法術特捜に身柄を拘束されている。そしてそのまま東和警察に身柄を移される。容疑はまず、銃刀法違反。そして次に、違法法術使用目的誘拐罪。銃刀法違反はそれほどでもないが違法法術使用目的誘拐罪は最長10年の懲役刑だ。法術特捜の主席捜査官は弁護士資格も持っててそう言った判例にも詳しいんだが……今回のケースは情状酌量の余地はねえからまず間違いなくまんま10年の懲役刑だ。そしてそのまま国外追放。当然、今の飼い主はオメエ等の事なんぞ忘れてるだろうから軍にも戻れないあの二人はアメリカのよくある市民たちと同じく放射能塗れの環境で生き、ろくな就職先も無く、餓死するか……身体を売って生きるか……お先真っ暗だな。その点オメエには運があった。オメエを選んだこの田代と言う男に感謝するんだな」


 そう言ってかなめは笑い、となりでシンディーの落ち込んだ表情を心配そうに見つめている田代に目をやった。

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