第167話 すべてはあまりに順調に進んだ
業務用エレベータは最上階に到着した。
それなりのホテルのスイートルームだけがある階。ホテルと言えばかなめの家臣の所有する超豪華ホテルくらいしか知らないカウラには少し貧相に見えた。
「カウラ、なにがっかりしてるんだよ。都心のそれなりのホテルなんてこんなもんだぜ。アタシが非正規部隊時代に身分を隠すためにSM嬢をしていた時はそれなりの会社を経営しているクラスのマゾ豚実業家がよくこんなホテルにアタシを連れ込んだもんだ。まあ、そこでアタシは用意した縄や鞭や蠟燭でそいつを虐め倒すのが仕事だったんだがな。なんでも、こういうホテルにとっては蠟燭でのプレイはかなり迷惑な話らしいや。実際、アタシも二度目に同じホテルに行った時はその社長門前払いを食らって泣いてやがった。まあ、その後は野外露出でアタシはより楽しめたからそれもアリなんだがな」
いつものようにサディスティックな笑みを浮かべるかなめに呆れたようにため息をつくとカウラはかなめが指定したシンディーが後二月は使用する契約をしている805号室を目指した。
「しかし、これだけ人がいないと……我々二人連れがいつまでも同じ部屋の前で立っていれば従業員から注意されるんじゃないのか?」
カウラにとっては田代とシンディーの存在は出来るだけ隠し続けるべき存在のように感じられていた。
「その辺は田代も元特殊工作員だ。タイミングくらいは分かっているだろうな。それにあの二人で歩いている時のシンディーとか言う女の顔。ありゃあ本気の顔だぜ。もし田代の野郎が上手い事英語で口説けばホイホイ服を脱いでシャワーに飛び込むんだろうとアタシは踏んだね。ここだ、首尾は……まだみたいだな……話を弾ませるより女をその気にさせるようにしろよ」
805号室は奥まったこのホテルでも最上級の部屋と言う雰囲気の場所にあり、シンディーの飼い主であるテキサスのご令嬢の財力を思い知らせるものだとカウラは思った。
「カウラ、この部屋が一泊いくらかとか考えてたろ?そんなの地球の政治を牛耳ろうとする為の投資としては安いもんだ。それ以前にあれだけの奇麗どころの米軍の特殊部隊員を引き抜いた金の方がよっぽど……ほら、田代の奴から連絡だ……鍵が開くぞ」
かなめはそう言うと身構えて手にしていたポーチの中をのぞきこみ満足げにうなずいた。
静かにドアが開き、そこからは田代が顔を出した。
「へへ、上手くいきすぎて怖いくらいだ……」
田代はそう言うなりかなめとカウラを部屋に案内した。部屋のソファーにはシンディーの着ていた厚すぎるコートどころかラフなワイシャツやデニムのスカート、そして下着類までもが無造作に散乱していた。
「意外とだらしのない女なんだな……地球人は性に奔放だというのは事実らしい」
カウラはその乱雑に脱ぎ捨てられた服を見ながら眉をひそめた。
「カウラ。オメエもその性に奔放な地球人の遺伝子で出来てるんだ。人の事は言えねえよ。特にオメエの神前に送ってるあの動画。アレを見たらシンディーは卒倒して目を回すぜ」
そう言うとかなめはシンディーの着ていた服を横にどかしてソファーに腰かけてタバコを取り出して火をつけた。




