第166話 順調に進むことと突然のアクシデント
タクシーはかなめの読み通り都心部手前のホテルの前で駐車した。
「カウラ、この裏に駐車場がある。そこに車を入れろ、確認したが空きはあるそうだ……まあ、普通の客ならチェックアウトする時間だから当然と言えば当然か」
かなめの指示通り、カウラは手前の交差点から巨大な真新しいホテルの裏に回るといかにも品のある背の高い四輪駆動車でも入れそうな地下駐車場に車を乗り入れた。
「西園寺、部屋は分かっているんだろうな?それとタイミングだ……そこをミスすればすべては水の泡だぞ」
カウラは一番手前の空いていた駐車スペースに車を停めるとエンジンを止めてそう言った。
「部屋は割れてる。それに入室のタイミングも何も、田代の奴が連絡してきてアタシ等の為に部屋のドアを開けてくれるんだ。間違えようがねえや」
そう言うとかなめは車を降りてそのまま業務用エレベータで最上階のボタンを押した。
その時かなめの携帯端末が振動した。
「アメリアの奴……しばらく待てねえのかよ」
愚痴をこぼしながらかなめは端末の画面を開くと予想通りそこにはアメリアと茜が写っていた。
『不味いわよ、アタシの付けてる女もカモを見つけたみたいなの。今、タクシーを待ってるところ……茜ちゃんはもう身柄を抑えてもいいって言う意見なんだけど……やっぱり不味いわよね?』
アメリアの思いもかけない報告にかなめは舌打ちをした。
「……そいつは予想外の展開……いや、好都合にできるな。茜に言ってその男を逆ナンパだ!」
突然のかなめの言葉に画面の中のアメリアは唖然とした表情を浮かべていた。
『何言ってるのよ!日雇い労働者を逆ナンパなんて不自然極まりないとその男だって思うしあの女も変だと気付くわよ!それにお堅い茜ちゃんがそんなことするわけが……』
そこまでアメリアが行ったところで茜が画面に飛び込んできた。
『分かりましたわ。出来るだけそれらしい風に努力してみます。要は時間を稼げばいいわけですわよね?そちらのエサに食いついた女が本格的にこちらに協力するように説得するまでなんとか引き伸ばします。どうせ、彼女は私達の前で別れたもう一人の女に連絡を取れば逆に自分の方が不自然な行動をとっていることになることくらいは理解している……こういうことは初めてですがやってみますわね』
それだけ言うと茜は通信を切った。
「こんくらいのトラブルがねえと面白くねえからな。しかし、あのお堅い茜が逆ナンパ?こっちよりその方がよっぽどアタシには興味が出てきたわ」
エレベータの到着と同時にそう言いながらかなめは端末をジャンバーに仕舞い乗り込んだ。カウラも一瞬あまりの出来事に呆然としていたがすぐにその後に続いた。
「さあて、今頃は田代の旦那は部屋で自慢の英語を披露しているころだろうな……その時あのシンディーさんとやらがどんな反応をするか……そしてその後の展開がどうなるか……すべてはドアが相手のお楽しみか?」
最上階に向う業務用エレベータの中でかなめは下卑た笑いを浮かべてそうつぶやいた。




