第160話 配置につく法術特捜と協力者たち
三人はそのまま狭い地下鉄から地上に出る通路を迷いもなく三谷へ続く進路を取った。
地下通路には地上の寒さを避けるために多数の路上生活者が新聞に包まって寝転がっている。
『別にお嬢様のこだわりになんか考えずに不死人になる事だけが目的ならそこらの寝ている一見オジサンの不死人達に声をかければ喜んでついていくわよ……まあ、そこらあたりがお嬢様のこだわり……と言うか人を人とも思わない冷たいお金持ちらしいところなんでしょうけど』
路上生活者には見向きもしない三人を見ながらアメリアはそんなことを考えつつ距離を置いて三人の後を追った。
アメリアの予想とは違い一番三谷に近い出口ではなく、その手前の出口で三人は階段を上り始めた。アメリアは気が付いたように茜の端末に連絡を入れた。
「茜ちゃん、ターゲットはあなたの車の近くに出るわよ。気を付けてね。あなたの髪の色。もし、あの三人に見られたら絶対あの三人は不審に思ってこの場を立ち去るわよ……絶対見つからないように。ああ、ラーナちゃんは見つかっても大丈夫だと思うわよ。あの子はどう見ても東和人にしか見えないから炊き出しのボランティアが準備をしているくらいにしか思わないでしょうから」
そう言うとアメリアは茜の返信を待たずに端末をポケットにしまった。
アメリアもまた、どう見ても東和人には見えない。茜だけでなくこうして三人の尾行を続けている自分が一番三人を刺激する可能性が高いことくらいは戦闘用人造人間『ラスト・バタリオン』の製造過程で植え付けられた記憶でそう理解していた。
ただ、アメリアのこの東和での長い暮らしで慣れ切って東和人と区別のつかなくなった所作は三人の女には『やたら身長の高い女がいる』と言う程度の印象を与えている程度のもののようで自分達がアメリアに尾行されているということを理解しているような素振りは見えなかった。
三人を追って路上に出たアメリアの目の前にやたらと値段の安い食べ物屋の看板と貧相なアパートの群れが飛び込んでくる。
治安の悪いと噂されている三谷の周りではありふれた光景。三人が進む道の向こう側に小柄なラーナと隣に立つ立ちんぼ風の女が話し合っているのを見てアメリアは安心したようにため息をつくと再び端末を取り出した。
予想通りそこには茜からの着信があった。
『アメリアさん、ラーナが三人とアメリアさんを確認しました。ラーナと一緒に居るのは私の弁護士事務所の弁護士の平木弁護士。まあ、見た目はそうは見えないですけど元々吉原で働いてていまでもそこの女の子のもめ事を解決するにはその恰好が良いんですって。まあ、この街であの格好は好都合……では、私は目立たない様に少し離れたところから見ていますので……これまでのように三人が分かれて行動を始めたら私はアメリアさんと合流してそのうちの一人を追うということでよろしくて?』
どこかの電柱の裏から見えない様に隠れている茜を想像してアメリアは思わず吹き出しそうになった。
「ええ、私は一番背の高い女を追うつもりだから、ラーナちゃん達は白っぽい髪の女をお願い。そして、あの髪の短い子はかなめちゃんの担当ね……気を付けてね。くれぐれもかなめちゃん達が目的を達成するまではこちらの目的が彼女達に分からないように」
アメリアはそう言うと今度もまた茜の返信を待たずに端末を紺色の長いコートに仕舞った。
町の建物の雰囲気が急に変わった。
ここが三谷の街。そして今日ですべてのケリをつける。アメリアは『ラスト・バタリオン』の本能で戦場に向う高揚感に支配されている自分に気付きながら周りを見回す回数が増えた女達を見守っていた。




