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第159話 目立つターゲットと目立つ尾行者

 アメリアは携帯端末を覗き見ながら数メートル先で黙ったまま地下鉄の真っ暗な窓の外を見上げる三人の金髪の女を観察していた。


 素人目なら彼女達のそれぞれ着た厚めの季節外れの冬装備の下にある拳銃の存在には誰も気付かない事だろう。


 そう考えるアメリアの左脇にも彼女の愛銃H&KP7M13があるのを思い出して思わず苦笑していた。


『おい、アメリア。こっちは準備万端だ。そっちの三人の女はどうだ?出来れば狙いのボブカットの女の機嫌がいいと最高なんだがな』


 耳の通信機にそう連絡してきたのはかなめだった。


「ええ、たぶん次の駅で降りるみたいよ。今、ドアの方に視線を向けたから……それにしてもそのエサも良い趣味してるわね。確かにあの顔は遼州人受けする白人の顔だわ。私もゲルパルト生まれであのお三方とは顔の作りが同じだから私もあんなかわいらしい顔に製造してもらえばよかったのに。他の二人はどう見てもゲルパルトじゃ受けそうな顔だけど東和じゃ人気が出そうにないわね。あれじゃあ、白人と寝たという自慢ぐらいにしかならないんじゃないの?あの街の男達の間でも」


 自虐的にそう言いながら地下鉄がゆっくりと減速していく中でアメリアはそんなことをつぶやいた。


『まあな、アタシも同意見だ。白人しか人権のねえアメリカ人の女を見る目はそんなもんなんだろ?まあ、目的のご令嬢はあの三人より東和じゃ受けそうな顔だった。いっそのことご本人が三谷にやってくる方が早かったんじゃねえのか?それにご本人が自由恋愛で不死人になるのならアタシ等の出番はねえわけだし。そんなに不死人になりたきゃ拉致なんて犯罪行為をせずに直接来いって言うんだ』


 かなめはいかにも彼女らしい暴言を言った。


「お金持ちで自分であの街に来たがるのはかなめちゃんと性的に欲求不満になった誠ちゃんに出会う前のかえでちゃんくらいのものよ。それより、どうせつまらないことでも考えてたでしょ?明後日の野球の第二戦のスターティングオーダーとか。かなめちゃんがこういう冗談を言う時は決まって別の事をかんがえているんだから」


 地下鉄のドアが開き三人の女は別に周りを気にする様子もなくドアから出て行った。アメリアも隣のドアから降りてその後ろに付ける。


『まあな、次の試合は県営球場みてえな広い球場じゃねえからな。大日市営グラウンド……あの狭さはなんとかなんねえのか?このリーグで一番あそこが狭い球場なんだ。神前には最優秀防御率を取ってもらいたいし、球威のないカウラは打ち取ったポップフライがスタンドインだ。そうなると島田……アイツは駄目だ。また、連続ファーボール記録を打ち立てかねねえ。そうなると……』


 頭の中は完全にこの前の勝てると思っていなかったリーグの万年王者『菱川重工豊川』に勝利したことで明後日の『八代乳業』との第二戦の事で頭の中が一杯になっているかなめはそう言った。


「今は、お仕事中。私も次回作のエロゲの企画を封印してこうして三人を尾行してるんだから。それにしても、彼女達鈍いわね。こんだけみんな信託領ジャパンに今でも住んでる日本人とそっくりな遼州人しかいないこの街でどう見ても白人にしか見えない顔の私の方を時々見ても何の疑問も感じていないみたいだもの。まあ、白人しか見たことの無い環境で育った軍人家庭に育てばそんな思考回路に育つのかもしれないけど」


 アメリアはそんな冗談を言いながら慣れない切符での降車に戸惑っている三人のターゲットの様子を観察していた。

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