第155話 独立のもう一つの鍵『法術』それは封印される定めだった
「そして、その独立戦争の止めの一撃が『法術』の存在だ。それが無ければよくある独立戦争……地球圏でも20世紀にはよくあった話だ。そして、その『法術』の存在がアンタを陸軍の立派な将校さんから今の日雇い労働者の身分に叩き落とした……違うか?」
そんなかなめの何気ない言葉に田代は自虐的な笑みを浮かべた。
「確かにな、そもそもこの遼州から地球に一瞬で移動できる。そんなこと地球人には理解不能だからな。そして俺の不老不死。地球の兵隊も何度撃ち殺しても同じ顔をしたゲリラが襲い掛かって来るってビビってた。機動兵器は対空ミサイルなんて東和から供与されていないのに次々と法術により撃ち落とされ、どんな強固な防御陣地も法術の空間破砕で一瞬で数千人の兵士ともども粉みじんだ。俺も情報収集のために地球軍の兵隊が出入りするバーなんかに入り浸ってたが次第に蔓延する厭戦ムードには敵ながら同情するしか無かったね」
田代はそう言うと昔を思い出すように笑った。
「そうだ。ただ、独立勢力、後の遼帝国の連中の法術使用の頻度は東和の予想したそれを遥かに超えていた。戦争なんか一度もしたことが無い東和政府は戦争となればなりふり構わず法術を乱発する遼帝国軍のやり方に違和感を感じ始めた。そこで、甲武の遼州での軍を統括する立場にあった田安高家が独立を宣言し、その後のアメリカ軍が独断で行った遼大陸への大規模な降下作戦が『賊将の剣』の放った『光の剣』の一振りで失敗すると東和政府は地球圏と裏で交渉を始めた。『法術』の存在を闇に葬る代わりに東和政府は一国平和主義を続けて地球圏には指一本触れたりはしない……その時、21世紀に入ってからの政治・経済・文化に関する東和政府が地球圏に対して行っていた工作活動の一部を披露して見せた……連中は驚いただろうね。自分達が『超富裕層』として君臨できた数々の21世紀の政治や経済の奇妙な現象は全て東和政府と言う宇宙人の管理監督下で行われていたことなんて連中は思いもしなかったんだから。それは地球人の政治家や経営者の功績なんだと思っていたのが、それは全て東和政府の誘導の下での現象に過ぎなかったんだから。これ以上東和政府に地球圏に介入されればろくでもないことになる。幸い、『法術』の使用を法術師を山と抱える東和政府自身が言ってきてくれるんだ。それに飛びつかないわけがない。そうして『法術師』と言う存在はこの宇宙に存在しないものとされた……あの『近藤事件』でその存在を再び宇宙が目の当たりにするまでは……な」
かなめの非情な言葉を聞いた田代は頭を掻きながら静かにうなだれた。




