第153話 遼州人による地球の憎悪の核戦争時代への誘導
「へえ、じゃあ俺達が地球に行って21世紀の『悪魔の時代』を演出して見せたことも当然アンタは知ってる訳だ」
田代の顔にはこれまでのありふれた日雇い労働者の顔から緊張した残忍な兵士の顔に切り替えてかなめとカウラを見つめた。
「ああ、おおよその事はな。20世紀が終わりに近づくと地球人達はそれまでの理性の顔を捨て去って本来の顔を見せ始めた。連中はアタシ等遼州人とは違って進化して農業にまで到達した連中だ。その農業を開始するにあたり、最初に地球人が始めたのは自分の集団以外を攻撃してその集積した富を奪って自分の富にする事……いわゆる戦争を始めたんだ。連中は本能のレベルで戦争を望んでいるし、その本能が満たされるのは相手を皆殺しにした時……そんな連中にこの遼州に来られたら迷惑千万だ。その時からアンタは21世紀の『悪魔の時代』に踊る地球人にそのきっかけを与えてやってたんだろ?」
そう言うかなめの顔にも残忍な笑みが浮かんでいた。
「そうだ、俺達は地球人の民族意識、宗教意識、国家意識を巧みに利用して対立感情を煽るような扇動工作を行った。しかも、連中は敵国がそれをやってると信じて俺達の事なんか無視してさらに対立感情に火がつくんだ。そりゃあ工作活動を仕掛けてる俺達としては見ていて連中が可哀そうになってくるくらいだったよ。ただ、さすがに俺達の最終目的であるアメリカ、ロシアこの二か国に対する全面核戦争と言う目的は中々果たせなかった。アイツ等も死にたくはないみたいだな。あれだけ憎みあって指導者自ら敵国を皆殺しにすると宣言しながら自分が逃げる場所がないからその最後のスイッチは押さないんだ……それを押してくれれば俺はあんな街に閉じ込められることは無かった」
田代のあまりに非情な言葉にカウラは言葉を失っていた。
「でも、オメエの工作はある程度は成功したな。21世紀半ばには限定核戦争は戦争の主流に置き換わった。地球での戦争の主力は戦車や戦闘機から核ミサイルに置き換わった。核ミサイルを敵の主要都市にいかに的確に落とし、いかに多くの敵国民を消滅させるかが戦争の主な目的となった。そして、通常兵器はあくまでも核ミサイルを防衛するため、核ミサイルを目的地に到達させるため、そして核ミサイルの迎撃システムの破壊の手段へと変質した……そして地球圏は次第に繰り返される核戦争により放射能に汚染された薄汚い惑星になった。そのまま放射能で滅んでくれればアタシもこんな面倒なことをしなくて済んだのにな」
そう言うとかなめはタバコを取り出し静かに火をつけた。




