第152話 地球人到着の日に突如現れた20世紀末日本の国『東和共和国』
「422年前だ。この星に地球人がやって来た……」
そう言うとかなめは天井にタバコの煙を吐いた。
「そんな昔話をするのかい?確かに俺はその時東和陸軍に居たのは事実だがな」
田代は仕方が無いというようにそう言って苦笑いを浮かべた。
「そうなんだ、その時、この国東和共和国は既にこの星に存在し、今とほぼ変わらない形であった。そこの人間は日本語を話し、20世紀末日本人のような格好をしてそんな暮らしをしていた。その日の記録がこれだ」
かなめは携帯端末を取り出した。そこには文書が映されていた。
「『特別国会第六回予算委員会議事録』……活字の読めない貴様がよくこんなものを拾って来たものだな。しかし、おかしくないか?当時はまだこの星には地球の文化は届いていないはずだ。なぜ、その日にすでにこの国に国会が有るんだ?それに『第六回』と言うことはそれ以前にも国会で予算委員会が開かれているとしか考えられない。そんな……焼き畑農業をやっていたこの国の『リャオ』はどんな魔法を使って一晩で五回も予算委員会を開いたんだ?」
カウラの言葉は震えていた。しかし、その理由はカウラにも少しばかり推測がついた。
「なあに、簡単なことさ。遼州人の瞬間転移法術。その範囲には地球もまた入っている。だから、地球人はわざわざ亜空間飛行技術が開発できるまでこの星には来ることが出来なかったが、この星の『リャオ』が地球に行くなんざ朝飯前なんだ。カウラ、ランの姐御は年ももう2回も地球に出張しているが日帰りしてるぞ。亜空間運航船なら最新鋭の軍用艦でも一週間はかかる距離だ。それが日帰り……つまりこの国の法術師は地球との日帰り旅行なんて簡単なことなんだ。別にそれは422年前以前であっても違いはねえ」
かなめはそう言うと静かに携帯端末をポケットにしまった。
「この星に地球人が来た時にはすでにこの星でこの国だけが地球と同レベルの技術水準を誇っていた。いや、地球人は未だに『アナログ式量子コンピュータ』の開発に成功していないからすでにそれをその時点で開発済みだったこの国の方が地球よりはるかに進んだ技術を持っていたと言えるかもしれねえがな……経済や生活レベルは20世紀末の日本でネットが使えるくらいの所で止まったまんまだけど」
そう言うとかなめは皮肉めいた笑みで田代を見つめた。
「そしてアタシが調べた限りでは地球人がこの星に到着した以前の記録は何一つ残っていない……すべての記録がそれから数年以内に完全に抹消された……そうとしか考えられないくらい奇麗に消えている……地球人が到着したその日からこの国は始まったことになっていてそれ以前の記録は調べる事すら不可能な状態……それが私の調べた範囲の分かったことだ。恐らくそれ以前の事を知ってるのは田代、アンタみたいに当時から生きてる不死人の記憶を頼るしかねえわけだ」
かなめはそいうとタバコを揉み消して真正面から田代を見つめた。




