第151話 400年の時を超えた戦士
「なんでそんなことが言えるんだ?俺は一言も英語なんて口にしてねえぜ」
平静を装うように息を整えながら田代はそう口にした。カウラはかなめの田代が英語が出来るということを言い始めたことと、それを隠し切れないでいるほどに動揺している田代の態度に驚いて目を剥いた。
「なあに、簡単な話さ。昨日、アタシ等があの街に最初に来た時からお前さんはアタシ等の後ろを付けて回っていた。女が珍しいあの街だ。他にもいたな、そう言う奴は。でも、他の連中とアンタとの違いはアタシから見たら決定的だった」
かなめはそう言うとジャンパーのジッパーを大きく開きその下にある拳銃をみせびらかすようにしてから内ポケットからタバコを取り出して火をつけた。
「ほら見ろ、アタシの拳銃を見てもオメエは顔色一つ変えやしねえ。さっき自分が英語が喋れるということをアタシが言った時ぐらいのリアクションがあってもおかしくないところだぜ……つまり、オメエはそれなりの鉄火場を踏んで来た存在と言うわけだ……当然銃の扱いにも慣れてるだろうな……ただ、この400年。東和は平和だったから銃を持つ機会が無かったから手を見ても銃を撃つとできるタコは消えてるだろうがな」
悠然とタバコをふかしながら自信ありげにかなめはそうつぶやいた。
「なんだよ、アンタの言い方じゃ、おれが400年前は軍人だったみたいな言い方じゃねえか。軍人になるにはちゃんとした身元の保証が居ることくらいこの街の人間は誰でも知ってることだぜ……それとも何か?400年前はそんなものは必要なかったのか?アンタは死ぬ人間だろ?400年前のこの国を見てきたみたいな口ぶりじゃねえか」
そう言う田代の口調には驚きと震えがあった。それが元々サディスティックな気質のあるかなめの笑顔をさらに残忍な笑顔に変えた。
「別にその時代に生きてる必要なんかねえよ。アタシは一見生身に見えるがサイボーグでね……当然ネットともこのおつむは直接つながれる。そこでオメエがアタシ等を付けてきていることに気付いた時に400年前にこの国の軍隊がどういう状態にあったか。そして400年前に隣の遼大陸で行われた遼州独立戦争にこの国がどうかかわって来たのかの電子データを調べてみたんだ……そうすると興味深いことが分かると同時に、オメエがなんで東和陸軍を追われてこの街に流れ込んで来たかの理由も分かったんだ……同情するぜ……同じ『非正規部隊』と言うまっとうな兵隊さんのお仕事とは無縁の仕事をしてきた同業者としてな」
かなめはそう言うとタバコを口にくわえて上目遣いに田代を見つめた。田代はかなめの鋭い眼光に怯むどころかこれからかなめが口にする言葉がどんなものになるのか興味を引かれたというような笑みを浮かべてかなめを見つめていた。




