第150話 かなめの親切心の裏側
三谷から少し離れた両口の喫茶店にかなめ、カウラ、そしてかなめが三人のアメリカから不死人を拉致するためにこの国に入国した女を釣り上げるエサとして選んだ田代の姿があった。
遅い朝食と言うことで大きめのオムライスにがっつく田代を見ながらかなめとカウラは優雅にコーヒーを飲んでいた。
「アメリアからの連絡では先ほどあの三人はホテルを出たそうだから……三谷の最寄りの地下鉄の駅まではあと一時間前後と言うところか。すでに、茜とラーナはそれを待ち受ける準備は出来ている……準備万端……あとは……」
かなめはそう言うとサラにこびりついたケチャップを舐めあげている田代に目をやった。
「オメエ、本当に女をひっかけるつもりか?アタシの狙いじゃオメエに例の女をゲットしてもらわねえとすべてが水の泡なんだ。もう少しちゃんとしてくれよ」
貴族出身だけあってテーブルマナーにはうるさいかなめが田代の下品な食べ方に文句をつける。田代は苦笑いを浮かべて皿を置いた後、真面目な顔をしてかなめを見つめた。
「随分と俺に優しくしてくれるじゃねえか。何が目的だ?地球へ拉致されるのは御免だってことは俺も同じ気持ちだ。そしてお巡りさんがそれを守ってくれるというのもその仕事の性質上分かる。でも、奇妙な話じゃねえか。なんで俺なんだ?あの街には俺みたいな年も食えねえ不完全な生き物がごまんといる。その中であえて俺を選んだ……理由を利かせてもらおうか。理由によっては俺は降りる」
はっきりとした口調で田代はかなめを見据えてそう言った。
「まずそこまでしっかり意見が言える不死人があの街にどれだけいるかね?その理由じゃ不足か?」
誤魔化すように笑うかなめをカウラは不思議そうな目で見つめていた。
「不足だね。あの三人の白人。あの街じゃ目立ちすぎて俺達にも話題になってたんだ。そこに来て今度はアンタ等二人だ、黒い髪のアンタは良い。あの街にもよく社会問題を研究しているとか言う東和の大学生の姉ちゃん達が時々来るからな。そんなのは慣れてる。しかし、緑の髪の姉ちゃんよ……アンタは何もんだ?」
田代の目はカウラの特徴的なエメラルドグリーンのポニーテールに向けられた。カウラは田代の不思議な生き物を見るような視線に戸惑って目を伏せた。
「アタシ等の素性ねえ……それより、アンタが選ばれた理由は簡単だ。アンタはおそらく英語が喋れる。しかもしれなりに実用的なレベルでだ。アタシの言うことは間違ってるか?アタシの目は節穴じゃねえんだよ。そんな人間この街じゃ滅多にお目にかかれねえだろ?しかもその理由が……いや、これはアンタが言うべき話なのかもしれねえな」
かなめはカウラを見つめていた田代に向けてそう言い放った。その言葉に田代はかなめ達に出会って初めて心の底から驚いたような表情を浮かべた。




