第146話 かえでの女性から情報を引き出す手口
「お嬢さん、お話をお聞かせ願えないだろうか?」
そう言って前髪を軽くかき分けるのがかえでの初対面の女性に出会った時の癖だった。
何もそんな気障なことはしなくてもいいのにと思いながら誠がその視線を受付嬢に向けるとかえでの思惑通り受付嬢は何なりとお申し付けくださいという顔でかえでの目から視線を話そうとしなかった。
「あのー、僕達警察のものなんですけど」
このまま沈黙の時間が流れるという事実に耐えかねて誠はそうかえでに見つめられて頬を赤らめている受付嬢に声をかけた。
「あ、はい、何でしょうか?」
ようやく正気を取り戻した受付嬢は誠の方を一瞥するが、その視線はすぐにかえでの方へと向いてしまう。
「臓器の移植手術……この病院では行っているよね?」
自分が話を切り出さないと話が進まないと察したかえでがそう言って受付嬢に声をかけた。
「はい、行っておりますけど……それは完全に紹介制となっておりまして。何しろ生体臓器の場合はそれを提供する提供者が居ない限りそもそも手術自体が出来ないわけですから。ああ、うちは非合法の売買臓器等を利用した臓器移植などは行っていませんよ。警察の方から疑われるようなことは決して……」
受付嬢はそう言って激しくうなずいた。
誠も『同盟厚生局違法法術研究事件』でこの国では『租界』の住民から摘出した臓器が平気で国内の病院の移植手術に使用されている事実は知っていたので、警察が臓器移植の話をすればそんな反応が返ってくるだろうことは想像していた。
「いや、僕達が確認しに来たのはその手術がこの病院で可能かどうかと言うことがまず一点。まあ、このことは君が可能だというのだからそうなのだろうね。そしてもう一点だが……その施設はこの病院にはいくつあるかな?そしてその中で長期の予約が煎れられているところがあるかどうかが分かると助かるんだ」
かえでの言葉に受付嬢は急に表情を変えて警戒感をむき出しにした。
彼女にも職務上の秘密を守る義務がある。それは誠が『特殊な部隊』に配属になって自分も同じような立場になった今ではよく分かる。そして相手が警察となれば聞いては来るが本来ならば裁判所の令状が無ければそれらを話す義務は彼女には無いことも法術捜査に当たるようになって知ることが出来た誠の少ない社会知識の一つだった。
「そう言うことになりますと……何しろ臓器移植と言うものは個人情報に直結する話になりますので……」
そう言ってなんとか言い逃れをしようとする受付嬢の態度を見て誠の隣にいたリンはニヤリと笑った。




