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第144話 かなめからの準備完了連絡

「でも茜ちゃん、この街を知ってるようでいて……茜ちゃんこの街の何にも知らないのね。この街で育った割にこの街の女の子の事何にも知らないじゃない。まあ、茜ちゃんは昔っから惟基先生の娘で、甲武貴族のお嬢様だってことはこの街の誰もが知ってることだったから誰も何も言わなかっただけかもしれないわね。私も司法試験に落ち続けてその間も茜ちゃんの女の子との相談を聞いてたけど、『惟基先生ならこんなことは言わないな』とか思うこと結構言ってたわよ。まあ、惟基先生よりは真面目だし、結果的には女の子の借金の整理とか店とのもめ事とかは解決してたから何も言わなかったけど……その子達、今、茜ちゃんに連絡して来る?してこないでしょ?惟基先生の所には結構あるみたい。でもまあ、惟基先生は筋金入りの熟女マニアだからお話しするだけで深い中にはならないみたいだけどね」


 そう言って笑う時美の顔には自分は嵯峨とは深い仲になれたという自信が満ち溢れていた。


「確かにそうかもしれませんわね……9歳の時からこの街に暮らしていたというのに私はずっとこの街の異邦人だった……そしてこの街の女性達と接していてもどこか壁があった……私はその壁に気付かなかった……これは私のおごりですわね」


 落ち込む茜を跳び起こすように携帯端末の着信が響いた。


「はい、嵯峨ですが。ああ、かなめお姉さま……その顔、まるで人を馬鹿にしているように見えましてよ」


 携帯の画面に映ったのは街を行くかなめの姿だった。その顔は得意げに茜を見下すような笑みを浮かべている。


『なあに、無駄足を踏んだエリートの顔を見るのがアタシは何よりの楽しみでね。こっちの方が先に目的達成できそう……と言うかこの事件は今日中にケリをつける』


 余裕の表情を浮かべるかなめの言葉に茜は首をひねった。


「そんなにこの事件は簡単なものなのかしら?実際、事件を起こす人間は特定できている。でも、まだその事件は起きていない……まさか何か仕掛けるつもりじゃないですわよね?」


 短気なかなめの性格を熟知している茜はかなめなら手段を選ばず行動に移すことくらいは想像がついた。


『なあに、エサを用意した。そこであの三人にはエサに食いついて『法術犯罪』を犯してもらう。その時点で現行犯逮捕。な?簡単なことだろ?もうすでにアメリアは三人がホテルを出て三谷に向ってることを報告してきた。あとは……アタシの守備がよく行くかどうかだが……一人はアタシとカウラが何とかするから良いとして残りの二人をアメリアとなんとかしてくれ。法術は使えねえとは言えアメリカ特殊部隊上がりの女戦士相手だ。もしかすると銃くらいは持ってるかもしれねえ。街中で暴れるのを取り押さえるにはアメリア一人じゃ不安だからな。すぐに合流しろ』


 かなめはそう言うと通信を切った。


「かなめお姉さまの勝手にも困ったものね……でもまあ、確かに長引かせたくない事件だったのは確かですもの……時美さん。もしよろしければ協力してくださる?『特殊な部隊』の捕り物を見る言い機会になりますわよ」


 これまで落ち込んでいた茜はそう言ってラーナと時美に目をやった。


「いいの?惟基先生の教え子たちの活躍をこの目で見られるなんて……ちょっとまってね。あの街にこの格好で言ったら目立つでしょ?着替えるから」


 時美はそう言うと奥の小部屋へと消えていった。


「あの人戦力になるのは間違いないんっすけど……いいんすか?部外者に犯人の逮捕をお願いしちゃっても。あの人、マジで日野少佐クラス……相手が銃を持って暴れたらどんな被害が出るか分からないっすよ」


 ラーナが心配していたのは二人の標的の銃よりも時美の法術のもたらす被害の方だった。


「大丈夫よ、あの人もお父様の下で助手をしていた時は法術師としての力を使いこなせないお父様に仕える法術師としてやくざ相手に大太刀周りを演じた人ですもの。心配するだけ無駄ですわ」


 茜の答えが堪えになっていないことにラーナは苦笑するばかりだった。

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