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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 不死人と謎の教団  作者: 橋本 直
第三十三章 着々と罠を仕込む『女関白』
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第141話 仕掛けを用意するかなめ

「さっぱりしたなあ……髭なんてきちんと剃るのはもう二年ぶりだ。風呂は……これもそのくらいかな……まあ、金が余るとコインシャワーを使ってたからな。現場の監督はそれで良いって言うんだからそれで良いんだろ?」


 かなめが『エサ』と呼んだ男が三谷から少し離れた朝草近くの銭湯から出てきたのを見るとかなめは笑い、カウラは驚いていた。


「貴様は……あの……貴様の名前は何というんだ?」


 そのあまりに変わり果てた薄汚い男の顔が映画俳優のような見事な整ったものに変わり果てていたのでカウラはそんな間抜けな言葉を口にしていた。


「俺の名前か?田代健って呼ばれてる。役所と現場で必要だからそう名乗ってるだけで、俺にはそんなものは記号でしかないんだがね。名前に意味があるのはこの街の外の死ぬ人間だけの話だ。ここで永遠と道路工事をする生きた作業機械に名前を付ける理由が俺には分からねえな」


 そう言う男を見ればたしかに来ている服はかなめがコインランドリーで洗濯させたので汚れは落ちているが立ち飲み屋のそれと同じで、同一人物であることはカウラにも理解できた。しかし、その変わりようにカウラは自分がこの街の人間をいかに見た目で判断していたかを思い知らされて自分を恥じた。


「いいねえ、合格点だ。アタシの見立ては間違いなかった。そしてそう言う風に物事を見られる頭を持ってるってことはそれなりに口は立つってことだな。田代さん、あんたはアタシの狙いとしては最適の人物だ」


 満足げにそう言うとかなめはスタジアムジャンパーから端末を取り出した。


「携帯端末ねえ……いかにもこの国が近代化されてから生まれた人間の特権だな。まあ、俺も持ってはいねえが使い方くらいはわかる。ここの連中は自分の持てないものには関心すら持たないんだ。所詮自分には関係が無いってね。でも、便利だからこの街の外に住んでる工事の監督たちは工事の工程表をその端末で確認してるんだろ?便利だったらあったら使う。当然の話だと俺は思うがね」


 かなめの端末を覗き見ながら田代はそう言ってかなめに笑いかけた。


 かなめはその端末の画面を開き、三人の白人女性の顔写真を表示させた。


「田代さんとか言ったな。アンタにはその賢いおつむのおかげでこの街から出るチャンスがやってきたわけだ。その条件はまずこの三人の中から一人の好みの女を選ぶことだ………どいつにする?」


 突然の思いもかけないかなめの提案に田代の表情は急に曇った。


「良い話には裏があるというのが自分に何かの価値があると勘違いしている外の世界の人間の常識らしいが……この街の人間は自分に価値が無いのは知ってるからな。俺もその一人……じゃあ、その提案に乗ろうじゃねえか。……この一番右の丸顔の女。コイツの全身を見せてくれねえかな」


 田代の言葉にかなめは満足げに笑うとその金色の短い髪の女の全身像を表示させた。ありふれた緑色のTシャツにスラックス姿のそれは見事な均整の取れた鍛え抜かれたそれだった。


「へえ、まるで新聞に出て来るアクションスターみたいじゃねえのか?本当にこの女が?」


 そう言って再び疑いの表情を浮かべる田代にかなめは黙って笑みを浮かべるだけだった。

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