第140話 結局は金で何とでもなる世の中
「左倉国立病院……でも、国立病院でしょ?ああいったところって私立病院と違って移植施設を長期に予約するなんて無理なんじゃないですか?」
そう言いながら誠は端末に写ったいかにも立派そうな病院の姿を見ていた。
「そうでもないさ、この国の官僚はあまり賄賂を受け取らない……しかし、それは『あまり』であって『絶対に』ではないんだよ。君もよくこの国で役所の横領や国会議員の汚職のニュースを目にするだろ?それはこの国のメディアがある意味優秀だからだけれど、彼等も万能ではないんだ。だから見つかるのはあくまで氷山の一角……そう言う僕も甲武国の国益を守るという名目でこの国の大臣やら高級官僚やらから情報を引き出した経験は何度かある……その時は彼等は平然と甲武の汚職役人の数倍の金を要求してきたよ。賄賂に危険が伴うならそれなりの金額を出せ。それがこの国のルールさ。当然、その出先機関にもその法則が適応されると考えるべきだろうね」
かえでは笑いながらさも当たり前のようにそう言った。
「この国でもそうなんですか……以前、かえでさんは甲武の今のかえでさんのお父さんの周りの人達も表面だけお父さんの理想に共鳴しているように見せてるだけで本当はお金が欲しいだけなんだって言ってましたよね。結局、そう言う意味では地球人も遼州人も変わりがないんですね」
誠は少しトラウマとなっている格好でかなめがやって来た恥ずかしい初デートの中で唯一のいい思い出である理想を語るかえでの姿を思い出してそう言った。
「そんなものさ。君が苦手な文系科目だが、社会に出ると経済学が一番重要な学問だと嫌でも思い知らされることになるものだよ。経済が法律を変え、経済が社会を変え、経済が文化を変え、経済が戦争を起こす。元々、地球人は自分が生きるのに便利なように貨幣を開発しそして経済が生まれたはずだった。経済は道具だったはずなんだ。しかし実情は違う。経済が人を活かしているのではなく、人は経済の為に生きる。経済的に不要な人間はその経済のシステムから弾き飛ばされて死ぬしかない。残酷だけどそれが現実だ。もし君がそれがどうしても間違っているというのなら遼帝国にでも行くしかないね。あそこはまだ貨幣経済を導入していない。今の宰相の地球人であるアンリ・ブルゴーニュは経済発展を訴えているが、皇帝がそのすべての提案を却下している。あの国は意地でも経済を受け入れない……経済の無かった遼州人1億年の歴史を曲げるつもりは今の皇帝には無いんだよ」
そう言って笑うかえで。誠はその皇帝が月3万円の男である嵯峨であることを知っているだけに苦笑するしかなかった。




