第138話 エサとなる男と待つ女
端末のその笑顔からは元軍人を利用してまで不老不死を手に入れていずれは兄二人の死後にその地位を奪い去ろうとするような野心のかけらも感じさせない美少女を見つめていたアメリアの端末が着信を知らせた。
『おい、アメリア。サボってんじゃねえだろうな?』
通信を入れてきたのは他でもないかなめだった。
「そんなわけないじゃないの。かなめちゃんの情報は全て性格だった……ひたすら感心しながら褒めていたところよ。それより、今の時間に何か用?この時間に連絡を入れて来るってことはそちらで動きが有ったんでしょうね。ここのホテルマンに聞いたけど、あの三人の出かける時間にはまだ少しあるわよ?何をするつもり?」
アメリアは入り口に目を向けながらかなめの言葉に聞き入っていた。
『ああ、方針転換だ。腰を据えてあの三人を待つってのはアタシの性には合わねえ。『釣り』をする』
突拍子もないかなめの『釣り』と言う言葉に自分の艦をその『釣り』で人生を破壊された社会不適合集団に任せている運用艦『ふさ』の艦長でもあるアメリアは苦笑いを浮かべた。
「釣りねえ……私としては釣り好きの人間とはしょっちゅう連絡してあの連中の自慢に付き合ってるからうんざりなのよ。それより、『釣り』にはエサは欠かせないわよ。たぶんあの三人は疑似餌に食いつくほど甘い連中じゃない。当然、最上級のエサじゃ無いと逆効果……そんな貴重なエサがあの街に転がってるのかしら?そんなだったらもう二か月もあの三人がこの東和に居座る理由の説明がつかないじゃないの。まあ、あの三人が自分達が不死人になって飼い主を裏切って東和に居続けたいからわざとずるずる仕事を引き延ばしているというのなら話は別だけど」
アメリアはそう言ってニヤリと笑って再び視線を端末の自慢げな顔を浮かべているかなめに向けた。
『エサの方は問題ねえな。ありゃあ、ここらの永遠に続く日常に慣れ切って神経の鈍化した野郎とは一味違う。少しは考えることを忘れちゃいねえこの街には貴重なエサだ。しかも、その面は間違いなく白人の女が食いつきそうな目鼻立ちのはっきりした色男だ。まあ、今は髭面で垢だらけの顔をしてるが……とりあえずその点をなんとかすればあの三人は間違いなく食いつく。叔父貴を見てみろ。お蔦が来てからすっかり貧乏くささが抜けた見た目になってからと言うもの街中で逆ナンパされたとか言って自慢してたぞ。まあ、アレは熟女マニアだから若い女は興味がねえとか言って断ったらしいけど』
そう言って笑うかなめの目には自信があふれていた。
「まあ、そう言うことにしておきましょう……長期の調査は『同盟厚生局違法法術研究事件』で懲りたから、私もこの事件はとっとケリをつけたかったのよ。じゃあ、そのエサの準備をお願いね。あと一時間もすればあの女達はそちらに向かうでしょうから……それまでにちゃんと間に合うようにそのエサを奇麗に洗浄しておいてね」
アメリアはそう言うと通信を切った。
「確かに永遠を生きる不死人のほとんどがあんな希望の無い町で生き続ければ女にモテるような話題なんて言えなくなるわね……でもかなめちゃんがその男に興味を持ったということはあの三人も食いつくかもしれないわね。まあ、ここは『関白太政大臣』の審美眼を信じましょう。
そう言ってアメリアはそのまま再び本の後が気を読んで三人のターゲットが出かけるまでの時間を潰すことにした。




