第134話 風俗街の英雄の娘を騙す演技
「そうですね、では、まずお父様とはどれくらいの頻度でお会いになっていたのかしら?そして、おそらくその時は一緒に月島屋の女将の春子さんもその場にいた……それで間違いありませんわね?」
まず、茜が切り出したのはその事だった。真剣な表情の茜を見て時美と村上が一瞬唖然としたような顔をした後吹き出して笑いだした。
「なんだ、そっちの方が気になるんだ……そうねえ、東都に新さんが来るときは確実にこの三人で遭ってた。目的は……ああ、それは茜さんは聞いてないわよね。まあ、新さんのすることだから言うまでもないことくらいは分かるでしょ?茜ちゃんももう大人なんだから」
時美は明らかに余裕のある態度で茜を子ども扱いするようにそう言った。
「……そうですか……確かにこういう系統の店でも格安店でもついこの前までのお父様の所持金ではあの頻度は通えないと思っていたけど、この街までの電車代なら払える……いいえ、その電車代も恐らく時美さんが出してあげてたんじゃないですか?違いますの?」
茜のカップを持つ指が微妙に震えていた。ラーナはそれが茜の怒りの爆発の直前の現象だと知っていたので、気になる時美の法術師としての実力や、なぜこれほどの実力者がこのような街で弁護士をしているかという質問は後にすることに決めて黙り込むことにした。
「普通先にそっちの方から聞くんじゃないのかな?色恋沙汰は嫌いって地球人の血を半分引いてる茜ちゃんが言うのは純血の遼州人で『モテない宇宙人』とか呼ばれてる私の言うことじゃないわよ。そう、茜ちゃんは管理費込み2万円、小遣い3万円にしてはどう考えてもおかしい大金を常に持ち歩いている父親である新さんに疑問を持っていた。でも、ここに来る女の子のほとんどがお金絡みの相談で来るのを知ってる茜ちゃんならなぜそっちを聞かないのかしら?」
時美は笑顔で茜に向けて余裕のある態度でそう言った。
「それは時美さんが小遣いをお父様にあげていた……いわゆる逆援助交際をしていたと考えてよろしいんですのね?」
今度は反撃とばかりに茜はそう言って時美をにらみ返す。しかし、時美はまるでそんな茜の態度に怯む様子もなく相変わらず妹を見るような笑顔で茜を見つめている。
「そんな人聞きの悪いことは言わないでよね。困ったときはお互いさまってこと。新さんはこの街の女の子で一番ひどい目を見ていた私や春子ちゃんを救ってくれたんだもの。それにその後は当時はこのあたりで大きな顔をして警察すら蹴散らしてた暴力団相手に私に力の使い方を教えてこの街を変えてくれた英雄よ。それくらいの事はしても罰は当たらないじゃないの」
隊長である嵯峨は実は金には一切困っていないが、娘である茜の顔を立てる為だけに演技としてあの貧乏生活を『特殊な部隊』で演じていた。ラーナはその事実に衝撃を受けるとともにその嵯峨に見事に騙されてその自分を責めながら歯ぎしりしている上司の茜に同情の視線を送った。




