第132話 待ち人と茜の推察
「それではどうぞ、少し早くお付きになったのでお茶にはしばらく時間がかかりますが……」
そのラーナから見ても色気の塊のように見える事務員は二人をパーテーションで隔たれた応接スペースのようなところに案内するとそのまま消えていった。
「あの人……身なりは堅そうですがなんかここで勤めてる女性とにたふんいきがあるんけど。それにどう見てもアレは嵯峨隊長の好みで選んだ人としか思えないっす。あの人長いんですか?ここ」
ラーナは事務員の腰付きの良い体形を思い出しながら顔を赤らめて茜に言った。
「ああ、村上さんは以前はここら辺ではよくあるお店。お父様好みの『熟女系』の店のナンバーワンだった方ですから。まあ、その後そのどう考えても実入りが良いあの仕事を辞めてうちに来たかは……たぶんラーナの想像通りですわね」
そう言う茜の表情はあえて無神経を装うように繕っていると言った風情の無表情で、その不自然さにラーナは思わず吹き出しそうになった。
「それより、村上さん?平木先生はまだなのですか?あの人にはこの仕事に就くにはいついかなる時も相談者に備えて早く出勤するように教えておいたはずですのに……」
沈黙に耐えかねたというように茜は茶を入れるにしては長すぎるとラーナが感じたくらいの時間がたった時点でそう口に出した。
その声に合わせたかのように村上と呼ばれた色気に満ちた事務員が笑顔で紅茶セットを運んでくると茜とラーナの前に置いた。
「平木先生は時間通りに来て時間通りに帰る。それは昔からじゃないですか。まあ、難しい案件を抱えている時は別ですが茜先生があの人に法律の勉強を教えていた時だってずっとそう。あの人は弁護士になっても何も変わりませんよ」
あまりに貧弱に過ぎるように見える狭苦しい事務所にしては見事な紅茶セットで村上は紅茶を慣れた手つきで入れた。
「そうですか、平木先生は相変わらずねえ……相変わらず……ラーナ。少し本題に入る前に平木先生に関してはお父様に関することでお尋ねしたいことが出来ました。そして同時に村上さんにも……」
茜の目に鋭い光がさすのをラーナは見逃さなかった。
「惟基先生の事でお話……なるほど、バレましたか……まあ、あの『人斬り新三』としてこの街で恐れられた惟基先生が一言も逆らえない茜先生ですからね……隠し事をするだけ無駄ですね」
煎れ終えた紅茶を茜とラーナの前に置くと村上はわざと首元まで締めたワイシャツのボタンを二つ外し、胸元が見えるほどの色気を感じさせる姿なって遠慮も無く茜達の前に座った。




