第129話 永遠の諦めを生きる男のたわごと
「あそこ、開いてるぜ。まあ、仕事にあぶれたら焼酎でも飲むしかねえのがこの街の住人の唯一の楽しみだからな……行くぞ」
仕事にあぶれた日雇い労働者が金を持っている場合を狙っているのだろうか、すでに立ち飲み屋は営業を始めていた。
事実、何人かの客が黙って店のカウンターでコップ酒を飲んでいた。
カウラはこうなったらかなめには何を言っても無駄なのと、目的とするここの労働者を地球に連れ去ろうとしている白人女性の三人組が現れる時間帯には間があることもあって黙ってかなめの後ろをついて立ち飲み屋に向った。
「親父!酒だ。それと今日はイカ天をくれ!」
乱暴な口調でそう言うかなめの声を聴いて隣の日雇い労働者が驚いたような顔をしてかなめを見つめた。
「ねえちゃん、見慣れねえ顔だな。どっからか流れてきたのか……ここは常連の店だ……アンタみたいな流れ者はお断りの店なんだぜ」
髭だらけの顔にしばらく風呂に入っていないというように赤に塗れて異臭を放ち、日に焼けた男はそう言ってかなめに笑いかけた。
「へえ、アンタは意外と面白い反応をするねえ。昨日この店に来てアタシに話しかけてきた男はアタシといくらで出来るかと言うことしか話してこなかったがな」
店の親父から焼酎を受け取るとかなめはそう言って異様な風体の男に話しかけた。どう見ても老人のような雰囲気だが、その眼光や肌の張りは叔父と同じように若者のそれである。そしてその口調はおそらくこの街が出来た400年前から同じ生活をしてきたことを物語っているとかなめは見ていた。
「なあに、そんなもんはこの街が出来て50年も経てば飽きるもんだ。だって死ぬ人間達は50年もそんな事は出来ねえんだぜ?つまり連中が出来なくなるということは俺達のように永遠に出来る人間だって女なんてものの価値をその程度の時間感じれば十分飽きるということだ。俺にとっては女なんて言う物に金を使うよりこうして酒で自分を忘れて一日を過ごす方がよっぽど価値のある金の使い方だ……そう思うが……違うかね?」
男の言葉にイカ天の乗った皿を受け取りながらかなめは満足げな笑みを浮かべた。
「それじゃあ、この街の立ちんぼ連中が食っていけねえだろ?連中だってアンタ等と同じ永遠にこの街で暮らしている仲間じゃねえか。そんくらい気を使ってやんな」
かなめはイカとはとても思えない堅い肉片を派手噛み千切った後、そう言って笑った。
男はその様子に満足げな笑みを浮かべると店の外を見回して諦めたような大きなため息をついた。




