第128話 セレブの女性のおこぼれにあずかろうとするもの
「誰か噂をしていやがるな……花がむず痒い」
そこは三谷の街。
西園寺かなめは愛用のコイーバクラブをくゆらせながらマイクロバスに呑み込まれていく日雇い労働者の群れを見つめていた。
「この光景が毎日繰り返される訳か……これが延々と400年間繰り返されている。しかも、ここの住人はその間ほとんど変わっていない……見ていて少し憂鬱になってくるな」
緑色のマフラーに手をやりながら電柱に手をやるカウラの言葉のどこかにあきらめが含まれていた。
「永遠の命……地球人はそれが欲しいというが、そりゃあ、連中が食うに困らねえ金持ちだからだ。永遠にこうして数少ない仕事を奪い合って運よくそれが見つかっても行き先でははした金で働く毎日同じ面白くもない仕事。そんなのが永遠と続くと聞いたら連中はどういう気持ちになるかね」
タバコの煙を吐きながらかなめは最後の労働者が乗り込んでドアを閉めて出ていくマイクロバスを見送った。
あたりを見回すと仕事にあぶれた日雇い労働者が諦めの顔で街の路地に消えていく様が見える。
誰も彼も薄汚れた顔に無精ひげだがその年齢がほぼ全員が25歳前後と言うのが実に奇妙で、かなめにもそんな中に自分の叔父である小局実働部隊長の嵯峨惟基の姿があったとしても別に不思議でないような気がしてきてため息が漏れた。
「しかし、あのここの労働者を地球に連れ去ろうとしている白人の女……この二日は見てねえな……諦めたのか……それともすでに面は合格のそんなカモを見つけて地球に拉致済みってところか?だとしたらアタシ等は無駄足だったということになるな」
そんなかなめのやる気のない言葉にカウラは厳しい視線を向けた。
「日野を見ればわかるがあの手の女は一人二人の男で満足するようなことは無いだろう。それにその女が一刻も早く不老不死になろうとするのならば多くの男の精液が必要となる。となると相当数のここの不死人を拉致すると考えるのが当然だろう。そうなれば例の女達はまたここにやってくる……しかも、連中たちは富裕層に雇われた使用人とは言え自分達も不老不死になる方法を知ってここの労働者に接触使用してきている訳だ……おそらく自分達が不老不死になったと確認できるまではここで活動を続ける……あの日野を見ていればその程度の事は私でも理解できる」
意外に純情な割にカウラはあっさりとかえでの考えそうなことを思いついてそう言った。
「確かにな……なにも金持ばかりが不老不死を狙っているとは限らねえからな。その金持のお使いの為にその不老不死になるための真実を知らされたある程度食うに困らない生活をしている女がそのおこぼれにあずかろうとしていてもおかしくねえわけだ……そうなると長丁場になるぞ、この事件は」
かなめは路上に吸い殻が散らばる歩道にひときわ目立つ長めのコイーバクラブの吸い殻を投げ捨ててゆっくりとごみごみとした簡易宿泊所の並ぶ道を最寄りの地下鉄の駅に向けて歩き出した。




