第126話 自分の事は棚に上げる誠以外の男の存在を認めない『男装の麗人』
「どうもこれは、嵯峨警部を怒らせてしまったようだ。恋にはこういう過程も必要……そしていつか君を僕の虜にして見せる……それじゃあ、報告の必要もないようだから県警本部に向かおう。誠君、リン、行くよ」
そう言って気障な敬礼を茜にするとかえではそのまま部屋を出て行こうとした。
誠がちらりと茜の方に目をやると相変わらずの嫌悪感満面の顔でかえでの背中を見つめている茜の姿があった。
「かえで様、さすがに茜様のかえで様への印象は私から見ても悪すぎるような……それにクバルカ中佐からのあれほどの叱責を受けても一切懲りてらっしゃらないようですね」
さすがにかえでの言うことには基本逆らわないリンも茜への好意を隠そうとしないかえでには少し呆れているようだった。
「人が人を好きになるということは素敵なことだよ。それを止める権利は誰にもないんだ。僕は嵯峨警部が好きだね。……むしろあのガードの堅さが僕の好奇心をくすぐる……ぜひ落としてみたい女性だ。ああいう女性ほど僕の魅力に気付けば僕無しには生きられない身体になるんだ。それに彼女は遼州人の血が濃いから『モテない宇宙人』である遼州人の特性として自分をモテないと信じ込んでいる。だからその魅力を気付かせてあげたい……僕なりの親切心と言う奴さ」
かえでもまたこの隊の女性の大半がそうであるように反省と言うことをしない人種なんだと誠はその言葉で確信した。
そのまま三人は本部棟からハンガーに降りた。
中央には現在は装甲を取り外された上に駆動系の部品も多くが抜かれて寝転がった状態で置かれている『武悪』の姿があった。
その向こうにはもうもうと熱気を発して湯気を上げている元々『武悪』に装着されていた『法術増幅触媒』が廃棄物扱いとでもいうように乱雑に積み上げられていた。
「これは日野少佐御一考!俺の仇は必ず取ってくださいよ!」
今は人作業終えての休憩中らしく、勤務中で病み上がりだというのにビールにタバコと言う姿の島田が部下達に囲まれて談笑していた。
「ああ、期待していてくれたまえ!それより君も少しは規則と言う物を考えた方がいいね。勤務中の飲酒は厳禁だし、ここは禁煙だ」
誠以外の男には自分の性欲を満たすだけの存在以上の一切の価値を認めず嫌悪感しか抱かないかえでは鋭い口調でそう言った。
『うわー……かえでさん。さっきまでの自分の行動を完全に棚に上げて滅茶苦茶言ってるよ……問題行動ならまだ島田先輩の飲酒や喫煙の方が軽いと思うんだけどな』
そんなことを思っている誠だが、言っても頭脳明晰なかえでの自己正当化の理論を聞かされるだけなので黙ってハンガーを後にした。




