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第124話 策士の娘は性格が悪かった

「それと、私も独自に調べたんですけれど……バノンはおそらく島田君の肝臓を狙っていますわね。『不死人の生き胆は不老不死の薬』これは『近藤事件』以降の地球圏のネットの世界ではほぼ常識となっている典型的なデマ情報です。バノンもそれに踊らされている……しかもその執刀医が元アメリカ陸軍の軍医と言うのもまた皮肉なものですね」


 さりげなく茜はそう言って嫌いなかえででなく視線をリンに向けた。


「元アメリカ陸軍の軍医?バノンクラスの超富裕層が雇うレベルの軍医となればアメリカ陸軍の法術研究についての知識くらいはあるはず……不死人の生体肝臓を一般の地球人に移植すれば数日で死に至ることくらいは知っているはずだ!」


 自分を見ようとしない茜に苛立つようにかえではそう叫んだ。


「ええ、それは十分に考えられることですわね。その人物……リチャード・クレメンスは軍退役後は臓器移植の専門家としてその道では知らない人が居ない程度の知名度を持っています。ただ、彼が元アメリカ陸軍の軍籍を持っていたということは彼の経歴からは奇麗に消えています……かえでさん……なぜそんなことが起きたかは察しの良さが自慢のあなたならお分かりになりますわよね?」


 ここで初めてあまり意見の合わない妹のかえでの顔を見て茜は挑発的な笑みを浮かべた。


「義父上の生体実験に関わっていた……ちなみに彼の年齢は?」


 緊張した面持ちでかえでは茜に向けてそう言った。


「47歳ですわ。外科医の現役が務まる期間はあまり長くはないのはかえでさんも当然ご存じですわよね。外科医と言うものは体力が資本の仕事です。特に臓器移植は数時間、長い時は十時間を超える手術をほぼ休憩なしでこなす必要がある。彼としてももうそろそろ現役の外科医から医大の教授にでも転職して気軽な生活に切り替えたいのでしょう。その為には出来れば大金が欲しかった。例え施術後に患者が間違いなく死に至ることがあっても特に心を痛める筋合いはない。あのお父様を切り刻んだ若き日の倫理観がクレメンスの中でまだ生きているとするのならばそう言う考え方で今回もこの東和にやって来た……そう考えるのが自然なのではないかしら?」


 すべては自分の方が優秀なのだ。ここで自分の優位をあまり好きではないかえでに見せつけておいた方が後々有利に働く。茜のかえで達の調査結果の上を行く捜査能力に感心するとともに誠は茜はその性格の悪さと策士ぶりは父親である嵯峨の娘なのだと改めて理解した。

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