第122話 地球人の遼州人への偏見と教祖の思惑
「遅れました」
そう言っていつものような無表情なままで現れたのは制服姿のリンだった。
「ああ、ちょうど君の調べていることについて誠君と話していたところだ……それで、あのバノンが選びそうな病院の目星はついたとか言っていたね」
かえでは笑顔でリンを見つめるとそのまま視線を誠に向けた。リンは当然とでもいうように誠の隣に腰かけた。そのあまりに自然ナスがたがさらに隣のテーブルのかなめ達のイライラを増幅させているのが分かって誠は冷や汗を流していた。
「はい、千要は東都と違って難しい生体肝移植を行う専門医を常駐させている病院は限られています。ただ、バノンの財力から考えれば地球圏からその専門医を呼び寄せている可能性がありますので、十分な施設がある病院であればその手術は可能だと考えられます」
リンがそこまで言うとかえでのメイドで今は寮母の一人であるメイド服の一番小柄な女性から朝食のトレーを受け取った。
「そうだね、おそらく後者がバノンの選ぶ手段だろう。バノンは地球人だ。地球人は遼州人に対して焼き畑農業しかできない遅れた人類だという根強い偏見がある。権威主義的宗教教祖であるバノンなら東和の遼州人の医師に信用を置かない可能性は高い」
かえでの言葉にリンは静かにうなずきながら納豆ご飯の納豆をかき混ぜ始めた。
「はい、かえで様のおっしゃる通りで地球圏での生体肝移植でその実績に置いて知られた人物の現在の活動状況を調べてみましたが、数名所在が分からない人物が居ました。その中の一人が恐らくバノンからの依頼を受けている可能性は十分に考えられます」
納豆をご飯にかけながらつぶやくリンに誠は正直感心してそのまま自分のように場当たり的な捜査ばかりしてきた隣のテーブルのかなめ達に目をやった。
かなめとカウラの表情は相変わらずだが、アメリアは一人珍しく真剣な表情を浮かべてリンの言葉に聞き耳を立てているように誠には見えた。
「なるほど、おそらく東和の入国管理局に問い合わせればその人物を特定することは出来そうだね。ただ、問題はその手術が行われる場所と、そこまでどうやって島田准尉を連れ出すかと言うことだ……バノンもあの襲撃で島田准尉に対する我々のガードが高くなっていることくらいは察しているだろう。そうなると強引な手段で島田准尉を拉致することは不可能に近いことくらいは理解しているはずだ。だとしたらバノンはどうやって島田准尉をその生体肝移植の行われる場所まで連れてこようと考えているのだろう?僕の今一番の疑問はそこなんだ」
かえでは難しい表情を浮かべて誠とリンの顔を見比べながらそう言った。




