第120話 出て行った人たち、出ていく人たち、やってくる人たち
「まあ、組織なんてそんなもんだわな。うちだってオメエが来る前はクバルカの姐御の席には今は本局勤めの明石のおっさんが座ってたし、カウラさんはまだ二番機担当で今は同盟軍事機構に居る西モスレムのうちとしては珍しい常識人の立派な人が座ってたんだぜ。どこでもそうだが誰もがいつでも同じ場所にいる?そんなの世の中じゃあり得ねえんだよ。まあ、俺は上の評判が悪いからたぶん一生この『特殊な部隊』の位置整備班長で終わりそうだがな」
島田はそう悟りきったように言った。
誠もなんとなく島田の言葉の意味が分かった。
かつてアメリアから『組織は生態系』だという彼女なりの組織論を聞いたことを思い出した。
それぞれに頼りあい、依存しあい、全体として力を発揮する。その為にこの『特殊な部隊』はこの他の隊では絶対に存在自体が許されないような社会不適合者の吹き溜まりとなっていた。
しかし、誠が来る前はそれなりに他の組織でも必要性があるという評価の人間が居て、その人間達はその必要とされるところへと旅立っていく。
そんな当たり前の社会の常識が隊でも屈指の社会不適合者と言うよりほぼ犯罪者の島田の口から語られるのは何とも皮肉なことだと誠は思っていた。
「でも、そうすると島田先輩……この後しばらくしたら整備班にきついことが起きるかもしれませんよ。西の奴。アイツは気が利くし常識もあるじゃないですか。なんでうちにいるのか不思議なくらいの人材ですよ。そのうちアイツうちから引き抜かれるんじゃないですか?そしたら整備班は回らないですよ……僕の05式乙型の法術関連の装備の調整とか島田先輩は奴に丸投げしてるじゃないですか。それが居なくなったらどうするんです?アイツの代わりを務まる人間って……整備班に居ます?」
誠はふとこの社会不適合者の吹き溜まりである『特殊な部隊』に居ることがかなり謎な存在である隊では便利な気の利く若者として知られている西の事を話題に出した。
「ああ、アイツか。確かにアイツが居ねえと整備班は終わるな。でもまあ、法術関係の知識だけはあってかなり正確に問題のある技術者なんて世の中にはいくらでもいるんじゃねえの?たぶん、あと二、三年もすれば西の野郎もうちを出ていくだろうがそしたらそのうちにぴったりの法術の技術はともかく人格にかなりの問題のある人物が飛ばされてきて西の代わりにその地位に就く。世の中そんなもんだ。まあ、もしその野郎がふざけたことを抜かしたらこの拳で黙らせる。それが俺の兵隊の育て方だ」
島田は少しあきらめに似たような笑みを浮かべて誠を一瞥した後ゆっくりと立ち上がった。
「じゃあ、俺は病後初のタバコを吸って来るから。神前は寝るまで勝手に時間を潰してろ。そして……俺をこんな目に遭わせたおかしな教団を調べる仕事……ちゃんと頑張ってくれよな」
そう言って立ち上がり、ベットの隣の置かれたピース缶から一本の煙草を取り出すと島田はそのままサラを連れて部屋を出て行った。
「いつまでも同じと言うことは無いんだな……出会いがあれば別れもある。それが人生なんだ」
誠はそんな独り言を言いながら島田の後に続いて島田の私室を出た。




