第116話 コピーはオリジナルには勝てない
「まあ、いいや。それより神前。日野少佐とはどうなってる?捜査とか言いつつ三人でホテルに入って……」
急に下卑た笑みを浮かべて島田がそう言って誠に笑いかけてきた。
「何を想像してるんですか!先輩は!かえでさんは仕事はちゃんとする人です。僕も捜査について経験があるからそれを教えようと張り切ってたんですけど全部僕より手早い情報収集をするんで僕の出番がないんです。なんだか僕は居るだけみたいで……少し落ち込んでます」
確かにかえでの情報収集能力は甲武海軍でも『斬大納言』と呼ばれる切れ者だったこともあり、今日一日誠は自分がかえでの何か役に立ったという自覚が持てなかった。
「そうか、でもまあ最初の浅い調査をしている時はそんなもんだろ。俺も『同盟厚生局違法法術研究事件』で最初に嵯峨警部から言われて警察署巡りをしている時はそんな感じだった。でも、状況は動くもんだ。あん時もそうだったじゃねえか。その状況が動き出した時……そんときがオメエの出番だ。オメエは日野少佐の『許婚』として命に代えてもあの人を守れ。それが捜査経験者の義務で『漢』の役目だ」
急に真顔になった島田はそう言って中腰のままで自分を見つめて来る誠にそう言った。
「守るって言ったって……相手はあのかえでさんですよ?僕に何が出来るんです?法術を使った格闘戦の模擬戦だって笑顔のかえでさんに僕は指一本触れる事さえできない。そんな僕にいざと言うとき何が出来るんですか?」
完成された法術師で『特殊な部隊』ではランと並ぶ二枚看板と言えるほどの高い法術能力を持つかえでに誠は正直無力感を感じていた。
法術が公になった今。干渉空間を使える法術師はそれなりの数が東都警察や東和国防軍にも在籍していることが明らかになった。確かに誠の必殺技である『光の剣』の使い手となると数えるほどしかいないがかえでが誠の事を利用して女性の特権でその力も持ち合わせている今、誠にかえでに勝てる要素は何一つ思いつかなかった。
「おい、神前。オメエはそんなだから駄目なんだ。日野少佐の『光の剣』は所詮オメエの法術のコピーなんだ。コピーはどこまで行ってもコピーだ。オリジナルには勝てねえ」
そう言って島田は立ち上がる。その様子に回復の色が見えていて誠は安心しながらそれを見送った。
島田は自分のコレクションのバイクの部品からシャフトを一本取りだした。
「例えばこれだ。よく出来てはいるがメーカー純正と言うことでネットオークションんで落としたが……こんなの俺ぐらいになると最近作ったコピーだってすぐに分かる。微妙なライン、材質の強度、そしてその放つ独特の雰囲気。所詮コピーはコピーだ。オリジナルには勝てねえんだ。だからいずれオメエの真価が生かせると気が来る……その時まで気軽に待てや」
そう言って島田は誠を見つめて笑いかけた。




