第114話 混沌の寮とかえでの不可解な行動
「まもなく到着です」
リンはそう言うと国道から車を寮のある郊外の建売住宅の並ぶ狭い道に乗り入れた。
「ようするにバノンは自分の事しか考えない人なんですね。でもそんな人がお金持ちで自分の言うことは何でも信じる人達を率いている。そして島田先輩に何かしようとしている……そう考えると少し怖いですね」
そんな感想しか今の誠には言えなかった。そして自分より一つ年上なだけなのに多くの事を語ることが出来るかえでを素直に尊敬していた。
「今はその程度の理解で良いと思うよ。それでは、明日はその肝心の島田准尉をなぜ付け回し殺害……いや、あれは島田准尉が本当に不死人なのかどうかを確かめるための実験だったと僕は思っているんだ。そして次に『神聖聖書協会』の信者たちが島田准尉の前に現れる時はバノンの望む自分が不死になるために島田准尉を連れ去る時だろう。ただ、バノンはどうやって島田准尉から不死の力を受けようとしているのか……まあ、それは明日考えることにしよう」
寮の駐車場にリンの運転する高級乗用車は乗り入れた。
すでに待ち構えていた現在は寮母長、そして以前はかえでの屋敷のメイド長であった長身の眼鏡をかけた高橋がそこに待ち構えていた。
彼女は静かにかえで側のドアを開く。
「さあ、今日はゆっくり休もう」
そう言うとかえでは誠に手を差し伸べてきた。
その手を素直に捕った誠はそのまま寮の駐車場に降り立った。
「この寮のオーナーは僕なんだよ。この駐車場の恥に置いてあるがらくたはどうにかならないものかな?」
思わず眉をひそめてかえではそう言った。
雨ざらしになったバイクや自動車の部品が乱雑に積み上げられている有様に誠は苦笑いを浮かべた。
それは大概が島田の私物の『いつか使うだろう』と言うことでネットオークションで落としたバイクの部品で、それなりに高価なものなので盗難者から守るために赤外線センサーがめぐらされていて島田に無断でそれを片付けようとした高橋達が何度となくそれに引っかかり島田と口論している様を誠は見ていた。
「まあ、人にはそれぞれ大事なものがありますから……確かに僕から見てもこんなもの難に使うのかよくわからないですけど」
自分に目をかけてくれていて時々鉄拳制裁はするもののどこか憎めないヤンキーである島田を庇う誠は苦笑いを浮かべながらそう言った。
「そんなものかな。誠君が言うんだからそう言う物なんだろうね。リン、もうすでに限界のようだ。いつもの用意を頼む。では僕はここで失礼するよ」
かえでは胸を抑えて足早に寮に入っていった。その後ろを誠に一瞥を投げて笑みを浮かべた後リンもついていった。
「一緒に帰って来たのになあ……もう少し色々教えてくれればいいのに。かえでさんは僕を成長させるのが生きがいなんでしょ?ああ、なんだか西園寺さん達と一緒に馬鹿をやっていた時代が懐かしいなあ」
そんなことを口にしながら誠は寮の玄関口を入ってかえでがオーナーを務めるようになりかえでの家の屋敷のメイドが寮母として掃除洗濯をするようになってから見違えるようにきれいになった寮の玄関に足を踏み入れた。




