第113話 より洗練された『選民思想』の新興宗教
「その宗教家としてのバノンだが……酷いものだよ。教義についてはたぶん今の誠君では分からないだろうから説明を省くけど……ああ、僕と結ばれることになれば僕がベッドの上で裸で教えてあげてもいいがね」
そう言って笑うかえでを見て誠はかならず誠に向けてはエロい話をしなくては気が済まないかえでの性癖を思って薬と笑った。
「彼は一通りの一般への宗教浸透が図れたと思うと、所有するテック企業の従業員への『神聖聖書協会』への強制改宗を命じた。アメリカでは一度仕事を失えば、労働者に残された道は地球圏を出ていくか餓死することだけだ。階級闘争の資本家の完全勝利に終わった地球圏の中でもその勝利が一番鮮明だったアメリカではそれが当たり前のことだからね」
誠は地球圏の事を聞くたびに恐怖を覚える。地球圏では超富裕層以外の病院は一切存在せず、放射能により寿命の短い労働者たちは失業すればたちまち生活に困窮し死か地球外に出ていくことを迫られることになると誠に社会常識を教えてくれているちっちゃい副隊長のランは言った。
「彼の所有する会社の従業員は職を奪われることの恐怖から改宗し、『神聖聖書協会』はアメリカではそれなりの地位の正当な宗教として政府から認定される立場になった。それでもバノンの野心は続いた……アメリカでは宗教の登録が義務付けられている。まあ、建国の精神がイギリス国教会からの解放だったアメリカがそう言う国になるのは歴史の必然だったのかもしれないがね。それは地球圏の宗教勢力があまり力を持っていない欧州の一部の国への布教、そして植民惑星への布教へと目を向けた訳だが……その教義は別として階級支配、経済搾取のやり方は調べている僕も不快になるほどだった」
かえでは覚悟を決めた時のようにそう吐き捨てた。
「『階級支配』?『経済搾取』?」
誠はまだ自分でも理系脳で文系の難しい単語を出されると困惑してぼんやりしてしまうことがあった。そんな誠を察してかえでは言葉を付け加えた。
「ああ、彼の宗教においては『キリスト教に改宗したユダヤ人こそが真のキリストの理解者である』と言う考え方なんだ。だから、彼の教団で力を持つにはまずユダヤ人に産まれる必要がある。主要幹部の出身地は様々だが、全員がユダヤ教からの改宗者……つまりユダヤ人だ。そして、その下の階層に白人男性、そして次が白人女性、それ以外の人種は一切発言の機会を与えられない。絶対的ヒエラルヒーがそこには存在している。彼の会社の従業員の幹部を見ると同じことがいえる……いかにも『選民思想』の国の生まれというところかな……ああ、君にはちょっと難しい話だったかな?でも、バノンの遼州人から見るとあまりに歪んだ人間選別の思想が僕には見て取れた……あんな宗教がこの格差を認めない東和で流行るわけがない」
切り捨てるようにかえではそう言うとそれまでの難しい顔を変えて誠に笑いかけた。




